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ルネサス、初の黒字でも崩壊危機?リストラ&給与減で人材流出、有力事業なく競争力低下

文=田沢良彦/経済ジャーナリスト
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 さらに、「事業部ごとの相対評価なので、社員を11段階に割り振らなければならない。したがって、がんばっても低評価の者が必ず出てくる。これまでの人員削減は応募制の希望退職だったので、がんばった者は残留できる望みがあった。しかし、今度は事実上の退職勧告ときた。『何がなんでも、5000人以上の首を切るぞ』という姿勢が見え見えだ。昨年6月から、低評価の恐れがある社員は『いつ肩を叩かれるのか』と戦々恐々としている。新制度の導入で、がんばった者も報われない会社になった」と、前出の同社関係者は憤る。

 ルネサステクノロジNECエレクトロニクスの合併で生まれた同社は、合併時に22カ所あった生産拠点を14カ所に減らし、社員数も同じく約4万3000人から約2万1000人(15年3月末現在)と半減させた。それでも、同社は「25%ぐらいの人員余剰がある」と、16年度末までに国内8工場の閉鎖や約5000人の人員削減を計画しているといわれる。

 経営コンサルタントの1人は、「給与減額の恒久化や退職勧告の制度化が、変革プランの隠された骨子とするなら、『構造改革の完遂』は社員の士気破壊にほかならない。そんな改革が『経営再建の総仕上げ』になるのだろうか。士気の低い社員が知恵と工夫で赤字を克服した会社はない」と呆れ顔だ。

リストラで虎の子事業の競争力が弱体化

 成長戦略に関しても、同社は不安材料が尽きない。その代表が、国際競争力だ。かつては世界シェア40%といわれるなど、同社は自動車用マイコンで抜群の競争力を誇っていた。それが「日の丸半導体を潰すな」とばかりに革新機構と8社連合の救済に結びついた背景でもある。

 しかし、「リストラに明け暮れている間に技術開発投資が断続的になり、優秀な技術者が流出していった」(業界関係者)。そのため、調査会社IHSテクノロジーの調査によると、14年の世界シェアは11%に低下している。同年は辛うじてシェアトップを確保したが、15年は3位に転落する可能性が高い。

「世界的な業界再編が進む自動車向けマイコン市場で、ルネサスは年を追って競争力が弱体化している」(同)という。しかも、自動車向けマイコンに代わる有力事業は何も育っていない。

 それを自覚しているのか、同社は先の決算説明会でも「半導体ソリューションのグローバル提案」を成長シナリオに掲げている。

 このシナリオの中身は、身の回りのものが通信機能を持つ「IoT(インターネット・オブ・シングス)」事業にほかならず、IoT事業部の立ち上げもすでに明らかになっている。

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