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ルネサス、初の黒字でも崩壊危機?リストラ&給与減で人材流出、有力事業なく競争力低下

文=田沢良彦/経済ジャーナリスト
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 同社がこの事業で展開するのは、産業用ネットワークエンジン「R-INエンジン」を核とするソリューションだ。これについて同社は「ドイツを中心に提唱されている第4次産業革命『インダストリー4.0』の実現に向けて生じている標準化、通信インフラ、セキュリティなどの課題を解決する『半導体ソリューションプロバイダ』を目指す」と説明している。

 しかし、業界関係者は「この分野はEU(欧州連合)の半導体強豪がルネサスより2周も3周も先で主導権争いをしている市場だ。今さらのこのこと事業部を立ち上げて、世界の最先端に追いつけるのか」と、同社の成長シナリオに首をかしげる。

9月で期限切れになるロックアップ契約

 さらに同社は、財務面でも時限爆弾を抱えている。

 同社の株式は、第三者割当増資を引き受けた革新機構と8社連合に加え、日立製作所、三菱電機などの持分が大半を占め、市場で取引されているのは2%強といわれている。これが、毎期最終赤字を垂れ流していても存続できた一因だが、この財務基盤が崩れる可能性が高まっている。

 革新機構と日立などがルネサスと結んでいるロックアップ契約(株式の一定期間売却禁止契約)の期限切れが、今年9月に迫っているからだ。契約解除になる10月以降、ルネサス株の69.16%を保有する革新機構は、出口戦略を発動するとみられている。

 そうなれば、ルネサスは革新機構が手放す自社株の買い取りを迫られる可能性もあり、15年3月期に稼いだ最終利益を吐き出さなければならなくなるかもしれない。

 証券関係者の1人は「ロックアップ契約を結んでいない8社連合の株式売却は、すでに始まっている。例えば、ニコンは15年3月期のルネサスの最終黒字転換を見越し、出資比率0.2%分の株式をすべて2月に売却している。残る7社も、黒字転換の余韻が残る今期の早い時期に、いつ売却に動いてもおかしくない」と指摘する。

 不安だらけの中で成長への舵を切ったルネサス。外見は化粧直しをした新造船風でも、中身はエンジンがボロボロの中古船である。そんな状況で、どのように半導体市場の荒海を乗り越えていくのだろうか。

 日本IBM常務執行役員や日本オラクル社長を歴任するなど「外資系を渡り歩いたプロ経営者」と呼ばれる遠藤新会長の手腕が注目される。
(文=田沢良彦/経済ジャーナリスト)

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