中国政府、進出する外資企業に企業秘密の提供を強制…自国企業に情報流し、外資締め出し
欧州大手スーパーマーケットの仏カルフールは、中国事業からの事実上の完全撤退を明らかにした。中国ではカルフールばかりでなく、都心型小売店を中国で展開してきたドイツの大手流通会社メトロや日本の大手百貨店、高島屋も中国事業から撤退することがわかった。英フィナンシャル・タイムズなどが報じた。
いずれも、長引く米中貿易戦争の影響や中国におけるインターネット通販の拡大、他社との競争激化で、業績改善が見込めないことが理由だ。さらに、中国政府が自国企業を優遇する政策を打ち出し、結果的に外国企業を市場から締め出していることも大きな原因という指摘もある。
カルフールは1995年に中国市場に参入し、大型スーパーマーケット210店舗とコンビニエンスストア24店舗を運営していたが、昨年の中国での売上高は前年比約10%減の36億ユーロ(約4377億円)。カルフールは昨年、中国事業の経営不振を改善するため、中国の大手IT企業のテンセントとパートナーシップ契約を結んでいたが、効果が薄かったことが撤退の決め手となった。このため、カルフールは中国本土での事業の80%を6億2000万ユーロ(約758億円)で中国小売大手・蘇寧易購(Suning.com)に売却することに合意した。残り20%をテンセントに売却する交渉を進めているという。
また、米通信社「ブルームバーグ」によると、独メトロも中国事業の大半について売却を進めており、「多数の潜在的パートナーとの対話の正式なプロセスに着手した」とコメント。メトロの中国事業は15億ドル(約1600億円)規模。1995年に中国に進出し、翌96年に1号店をオープンさせて以降、徐々に店舗網を拡大し、現在は全国58都市86店舗を展開。卸売り専門なので、店舗が倉庫のようになっており、商品の容量が大きいことが特徴だ。
一方、高島屋は海外連結子会社である上海高島屋百貨有限公司を解散すると発表。8月25日に開催する同公司の株主総会で決議し、上海高島屋は同日閉店する予定だ。上海高島屋は2012年に開業。高品質な日本製品などを取りそろえていたが、開業以来赤字が続いていた。今年2月期の決算は営業収益が71億2300万円(前期は70億200万円)、営業損益は8億6600万円の赤字(同 11億4000万円の赤字)だった。撤退に伴って20~30億円程度の特別損失が発生する可能性があるとしている。
これらの相次ぐ撤退は、米中貿易戦争の激化による中国内の消費底冷えが背景にあるが、米トランプ政権が主張するように、「中国政府が外資企業の中国市場進出の際に、企業秘密ともいえる企業情報の開示を強制していること」が大きな要素だ。
米紙ウォールストリート・ジャーナルは、中国政府が国内産業の成長を目的とした自国企業の優遇のために、外資の企業情報を中国のライバル企業に流す一方で、自国企業育成のために政府の補助金を交付するなど、中国政府自体が外資の追い落としを図っているなどと指摘している。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)