付加価値を向上させて値上げが奏功
ところが、17年3月期から風向きが変わった。この頃から人手不足を背景にアルバイト募集時の時給が高騰するようになったことが、ラウンドワンの追い風となった。時給上昇はコスト増につながり利益が圧迫された一方、メイン顧客の若者の所得の上昇につながり、それによりラウンドワンを利用する若者が増えたとみられるためだ。
さらに、体験型の「コト消費」が広がっていることも追い風となった。コト消費といえば、東京ディズニーリゾートやユニバーサル・スタジオ・ジャパンが代表的だろうが、どちらも来園者は増加傾向にある。オワコン化したカラオケも近年は手軽に利用できる娯楽として少しずつ盛り返しており、カラオケ大手の業績は好調だ。
こうしたことから、マイナスが続いていた既存店売上高は17年3月期に1.9%増のプラスに転じた。この期は国内8店を閉鎖したことも影響した。続く18年3月期は5.3%増、19年3月期は0.9%増と、3期連続でプラスとなっている。
前述したように19年に入ってからも好調だが、これは1月から順次実施した値上げが影響している。ゲームセンターのメダルの貸し出し価格とスポッチャの入場料を1月から、ボウリングとカラオケの料金を4月から順次値上げしたのだ。ラウンドワンはこれらの値上げが既存店売上高の向上につながったと分析している。
付加価値を高めた上で値上げしたことが奏功した。ボウリングとカラオケでは1月から、スクリーン画面とマイクを通じて、ほかの店舗にいる利用客と一緒に遊べる設備「ラウンドワンライブ」を使ったサービスの提供を開始。ほかの店舗の利用客とボウリングのスコアを競ったり、カラオケで一緒に歌ったりできるようになった。新たな楽しみ方を提案し、付加価値を高めることに成功した。
ゲームセンターでは、新型のゲーム機を適宜投入した。それらが好調だったという。スポッチャでは、電動式ローラースケートを新たに導入するなどコンテンツを充実させている。こうして付加価値を高めた上で、値上げに踏み切ったのだ。
値上げした後に売り上げが上がったというのは、興味深い話だ。というのも、たとえば、客の移ろいが激しい飲食業界では、単なる値上げは客数減、売上減につながりやすく、客単価が上昇しても、客数減を補いきれないケースが往々にしてあるためだ。しかし、ラウンドワンでは、そうはならなかった。それは、ほかで簡単に代替できない魅力がラウンドワンにあるためだろう。コト消費と若者の所得増が追い風となるなか、付加価値を高めたことが功を奏したといえる。