一方、JR大阪三越伊勢丹の運営会社、JR西日本伊勢丹に共同出資している三越伊勢丹ホールディングス(HD)も13年3月期の連結業績予想を下方修正した。経常利益は前期比22%減の300億円と、従来予想を80億円下回る。持ち分適用会社のJR西日本伊勢丹が特別損失を計上したのに伴い、持分法による投資損失分、80億円を減額したことによる。
三越伊勢丹HDでは13年3月までに大阪三越伊勢丹店の再生プランを固め「16年3月期までに黒字化させる」(大西洋社長)とした。いわば、大西社長の公約である。喫緊の課題となっている、婦人向けファッションの品揃えや売り場の構成を見直す。
三越伊勢丹の敗因について東京流の売り方が大阪では受け入れられなかったからだ、といわれている。三越伊勢丹のセールスポイントは「自主編成の売り場」。テナントに頼らず、社員自らが商品を目利きして仕入れ、売り場のレイアウトから販売までを一貫して行う。しかし関西ではブランドごとに区分して販売するのが主流であるため、複数ブランドが商品別に並ぶ売り場の構成が、買い物客にわかりにくかったと分析されている。
それだけではない。梅田地区のライバル店が高級ブランドのテナントに対して三越伊勢丹への出店を控えるように求めたのが大きかった。高島屋と阪急阪神百貨店を擁するH2Oリテイリングが、一時期、経営統合計画を打ち出したのは三越伊勢丹を封じ込めるのが狙いだった。
高島屋が伊勢丹の本拠地の新宿に出店した時に、伊勢丹本店の圧力で高級ファッションの品揃えができなかった。そこで、大阪で圧倒的な力をもつ高島屋と阪急が手を携えて取引先に圧力をかけ三越伊勢丹の出鼻を挫く作戦に出た。初期の目的を達成したので高島屋と阪急阪神百貨店の統合計画は解消。高島屋の鈴木弘治社長は新宿の仇を梅田で討ったわけだ。
JR大阪三越伊勢丹の失速で「JRの駅に直結する百貨店の一人勝ち」という神話が崩れた。これまで各地の流通地図を塗り替えてきたのはJRの新しい駅ビルに進出した百貨店だった。
その嚆矢が97年にJR京都駅ビルに開業したJR京都伊勢丹である。年間売上高645億円は、京都が発祥の大丸京都店の売上高(684億円)とほぼ並ぶまでに成長した。地域一番店の高島屋京都店の839億円を追う(いずれも11年度実績。以下同じ)。
00年開業のJR名古屋駅ビルに進出したJR名古屋タカシマヤの売上高は1040億円。日本で最も歴史が古い老舗百貨店、松坂屋名古屋店(旧・松坂屋本店)の1111億円に迫る。