株式の持ち合い解消でスズキはVW株式を1000億円で売却し、5000億円規模で自社株を買い戻すわけだ。単純計算になるが、差し引き4000億円のマイナス。国際仲裁裁判所での係争期間は4年に及び、日進月歩で進んでいる世界の自動車メーカーの技術開発競争において長い空白ができた。スズキの授業料は実に高くついた。
VWと提携解消発表後最初の営業日となる8月31日、東京市場でスズキ株は4291円50銭(140円高)の買い気配。17万株の買い物が集まり、4339円50銭(188円高)で寄り付いた。高値は4340.5円(189円高)だったが、同日の終値は前週末比マイナス(22円安)の4129.5円まで下落した。
VWとの提携解消で経営のくびきが取れたという面から見れば確かにプラス材料だが、今後、世界第10位の自動車メーカー、スズキがどう生き残りを図るかについて投資家には懐疑的な様子がうかがえる。
8月31日付け日本経済新聞は「物言う株主として知られ、8月初旬にスズキ株の保有を明らかにした米投資ファンド、サード・ポイントのダニエル・ローブ最高経営責任者(CEO)が、『フォルクスワーゲンから買い戻す株はすべて消却すべきだ』と述べた。消却で株数を減らし、資本効率を高めるよう求めたものだ」と報じている。
スズキはVWから買い戻した株式を次の資本・業務提携の切り札に使う算段である可能性もあり、サード・ポイントの要求が通れば「次の一手」が狭められることになる。
囁かれるGMとの関係
スズキの鈴木修会長は8月30日の記者会見で、「まだ次のことまで考える余裕はないが、自立して生きていくことを前提にしたい」と述べるにとどめた。世界の自動車メーカーや投資家の関心は、新たなパートナーはどこかということだ。イタリアのフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)が秋波を送っているが、VWとの関係悪化で懲りたスズキは、気心の知れない相手と組む気はないとされる。
そこで浮上するのが、08年に資本提携を解消した米ゼネラルモーターズ(GM)との復縁だ。
スズキはGMと喧嘩別れしたわけではない。GMはスズキの国際展開の原点でもある。1981年8月、GMとの資本提携を発表する会見で、修氏は報道陣から「スズキはGMに飲み込まれてしまうのではないか」としつこく聞かれた。この時の修氏の答えは次の通りだった。