そもそもユニゾHDは、常和ホールディングスという旧日本興業銀行(現・みずほ銀行)系の不動産会社として発足した。今も小崎哲資社長を筆頭に旧興銀出身者が経営陣に名を連ねている。大株主には、HISが躍り出てくるまで筆頭株主だった系列保険代理店の共立や日鉄興和不動産、興銀リースといった旧興銀系の金融会社や事業会社が多い。ユニゾHD株の2~3割はみずほグループ系の企業が保有しているとみられている。
ところが小崎社長以下、ユニゾHDの経営陣は、「脱みずほを志向してきた」(みずほフィナンシャルグループの幹部)。実際、18年5月までに過去5年で4回の公募増資を実施。みずほグループの持ち株比率を薄めてきた。だから買収防衛力は低下した。「ユニゾが勝手にやったこと。自業自得だ、とみずほの首脳は立腹している」(金融担当記者)との情報もある。
公募増資の結果、外国人の持ち株比率は19年3月期末で17.2%と、14年3月末の8.9%からほぼ2倍になった。個人投資家は同期間に9.2%から28.2%と3倍に。HISは株主構成の変化に着目した。外国人投資家や個人投資家は、相次ぐ公募増資で株価が低迷していることに不満が強い。条件次第ではTOBに応じる可能性がある。そこで55%のプレミアムをつけた。
みずほFGの動き
しかし、みずほFGには、HISにみすみすユニゾHDをM&Aされるわけにはいかない事情がある。株式市場では、「同じみずほ系の日鉄興和不動産やヒューリックなどをホワイトナイトに仕立て、対抗TOBを仕掛けてくるのでは」といった観測が流れている。日鉄興和の筆頭株主は45%の株を握る日本製鉄である。日鉄サイドの了解を得る必要がある。
かねてからみずほグループは、旧3行の不動産会社を一本化すべきだと指摘されてきた。旧興銀系がユニゾHD、旧富士銀系がヒューリック、旧第一勧銀系が日本土地建物である。HISからTOBを仕掛けられたことを奇貨としてヒューリックを核に、みずほグループの不動産会社の統合に向かうのではないかという見方が根強い。ホワイトナイト登場の期待からユニゾHDの株価はTOB価格(3100円)を上回り続けている。