HISがユニゾHDを買収する狙いはどこにあるのか。澤田氏は「ユニゾHDと提携してホテル事業を強化して、トップ10入りしたい」と表明した。ユニゾHDは「ホテルユニゾ」「ユニゾイン」「ユニゾインエクスプレス」の3つのブランドで25棟(他に計画中のものが8棟)のビジネスホテルを展開。HISの計画中も含めた国内外の67棟のホテルと連携させ、合わせて100のホテルを運営し、10位以内に食い込むという構想だ。
ユニゾHD側はHISが想定するホテル事業での相乗効果について「ターゲットとなる顧客層が明白に異なる」とし、「シナジー創出は期待できない」と指摘した。確かにユニゾHDはビジネスホテルで完全にビジネス層。一方、HISはロボットホテルなどレジャー客が主流だ。もっとも、HISがユニゾHDを買ってもビジネスホテルの勢力地図は変わらない。アパホテルが518カ所。ルートインホテルズが301、東横インが298と、大手チェーンの牙城を崩すことはできそうにない。
「HISが本気でホテル事業をやるというのなら、もっと大きなチェーンを買うべき。ユニゾになったのは、損をしない程度に投資するという印象。株主対策という側面もあるのではないか」(M&A仲介会社の幹部)
メガバンク系上場企業も敵対的TOBと無縁でなくなったことだけは確かだ。
米エリオットがユニゾ株を保有
米投資会社、エリオット・マネジメントが関東財務局に提出した大量保有報告書で、ユニゾHD株を5.51%保有していることが明らかになった。その後、保有比率は6.62%まで上昇した。大量保有報告書では保有目的を投資としているが、「状況に応じ、建設的な対話や助言、重要提案行為などを行う」としている。
ユニゾHDの株価は日経平均株価が急落しているなかでも8月7日、3710円(150円高)で取引を終了しており年初来高値。TOB価格(3100円)を20%上回っていた。8月9日の終値は3400円とさすがに下げた。
エリオットは米投資ファンド、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)の日立国際電気のTOBに介入し、2度、TOB価格を引き上げさせた。この連想もあって、エリオットのユニゾHD株取得がTOBの新たな波乱要因となる。
(文=編集部)