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横川潤「外食万華鏡」

スシローの革命的意義、その驚異的成功はドリームである 新業態店は魅力なく残念感満載

文=横川潤/文教大学准教授、食評論家
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「ツマミグイ」

 さて、あきんどスシローの気になる最新動向はといえば、「ツマミグイ」である。今度は「回らない寿司店」で、同社HPでは「私たちがお届けするのは、新しいおすしの時間です」と謳っている。私もあきんどスシローの「次の一手」は「回らない寿司」ではないかと踏んでいた。さて、あきんどスシローは二匹目の「大」どじょうを釣り上げるのか。

 お盆休みの終盤、「ツマミグイ 赤坂見附店」に出かけた。わざわざ電話予約をして出かけたが、その必要のない空き具合だった。スタッフはサービスのプロとは思えぬ若者たちで、カウンター席を設けていないことからも、サービス重視の店舗でないとわかる。私はあきんどスシローの「次の一手」を、「よりサービスに重きを置いた店舗」と想定していた。平たくいえば、「お父さんがえらく見えるような店」である。寿司店は今なお一般的に敷居の高いイメージがある。すなわち、美味しい寿司をカウンタースタイルでリーズナブルに提供し、握り手がしっかり客の名前を覚え、お父さんもお母さんも、子供たちも気分がよくなるようなサービスを提供できるお店……。そこにビッグビジネスのチャンスがありはしまいか。

 残念ながら、ツマミグイはすべてにおいてその逆をいっていた。サービス不在、価格に対して小さすぎるポーション、料理提供スピードの遅さ、魅力に乏しいメニュー構成……。メニューは新味にも欠け、たとえばすぐ近所で10年以上前から商っている「Ninja Akasaka」のほうがよほど斬新で、「新しい業態の創出」とはほど遠い状況にある。

 要するに、「スシローファン」としては落胆を禁じえない経験だった。

 しかし、振り返ってみれば、外食産業は新業態開発の失敗の歴史だったのだ。すかいらーく1社とってみても、「ドナシェリー」「アジオ」「ビリージーン」「グリーンテーブル」「マルコ」等々、人知れず消えていった新業態は山ほどある。

 企業がいつまでも若さを、そして高株価を維持するため、果敢に新業態開発に打って出ることは必要不可欠である。あきんどスシローの「次の一手」に期待したい。
(文=横川潤/文教大学准教授、食評論家)

横川潤/文教大学准教授、食評論家

横川潤/文教大学准教授、食評論家

文教大学国際学部国際観光学科准教授。1962年、長野県生まれ。慶應義塾大学大学院修士課程修了。ニューヨーク大学経営大学院にてMBA取得
横川 潤 亜細亜大学

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