街中にあふれる駐車場「タイムズ」に驚愕の秘密?稼働率47~48%維持の高度な仕組み
稼働率の目標値は?
もうひとつの鍵は、そうして定義した稼働率の最適値を明らかにすることだ。素人考えでは、稼働率は高ければ高いほど望ましく100%を達成することが理想的に思える。
ところが、パーク24が最適としている稼働率は47~48%という。目標値としては意外なほど低いように思える。また、その範囲はわずか1%と狭い。これより高すぎても低すぎてもいけないという。
稼働率の目標を低めに抑えるのには理由がある。駐車場を満車にせず、必ず1~2台空くようにしているのだ。駐車場が満車なのは短期的にはよいかもしれないが、いつ来ても満車だと、やがて客離れを起こしてしまう。「タイムズの駐車場はいつ行っても停められる」とすることが、長期的に成功する秘訣だ。
稼働率が目標とする範囲から外れた場合、最適範囲内に収まるよう工夫する。たとえば最適値よりも低い場合、パーキングロット数を減らし駐車しやすいようにレイアウトを変更することで、狭くて駐車しにくそうだと敬遠していた初心者でも停めやすくする。逆に稼働率が高ければ、そこに需要があることを意味するため、営業マンたちが新たな駐車場を開拓する。ニーズのあるところに駐車場をつくれば外れがない。新しい駐車場の料金をいくらに設定するかという指標としても稼働率を活用している。
データを活用するためには
データ活用の秘訣は、目的を持ってデータを収集し、経営指標として日々のオペレーションに生かすことだ。とにかくあらゆるデータを収集しようとすると、とんでもないことになる。何も考えずにビッグデータを活用しようとしても振り回されるだけだ。
パーク24の経営でも、稼働率という経営指標の定義とその生かし方が鍵であった。闇雲にデータを集めるのではなく、どういう目的でどのようなデータを収集し、それをどうビジネスに生かすか、そこを明確にすることだ。情報システムの開発も人任せではいけない。自分たちで苦労して開発してこそデータを生かせるし、他社との差別化も可能となるのだ。
パーク24は、TONICによって収集したデータで稼働率を把握し、その指標を基に駐車場の開拓や料金設定を行っている。近くにある駐車場でも微妙に料金が違っているのは、こうした指標に基づいているからだ。
利用者にとっても企業にとっても、収集したデータがまさに機能している。パーク24は、スモールデータを経営に生かしている先進的企業といえよう。
(文=宮永博史/東京理科大学大学院MOT<技術経営専攻>教授)
※参考資料 『タイムズパーキング革命Ⅱ』(鶴蒔靖夫/IN通信社)