新経営陣の投資第1号は料理動画で世界最大級の米テイストメイド(カリフォルニア州)。約14億円を出資した。食材の下ごしらえから調理、盛りつけまでを1分程度で見せる。インスタグラムなどSNS(交流サイト)で配信される。視聴者が1カ月に2億5000万人、再生回数は25億回を誇る。料理動画は日本のスタートアップも進出済み。エブリー(東京・港区)の「デリッシュキッチン」、デリー(東京・品川区)の「クラシル」が有名。レシピサイトのクックパッドも参入している。「日本の料理動画を世界に発信するための出資ならともかく、官民ファンドがなぜ海外企業に出資するのか」と大きな疑問符がついた。
勝負が早くつくので、一攫千金を狙う投資家は米国のスタートアップに出資する。同機構は日本文化の輸出という大義名分を掲げているが、利益最優先の投資会社に変身したということだろうか。テイストメイドでの動画配信の決定権は米社側にある。日本関連の動画を制作しても、テイストメイドが認めなければ海外の視聴者の目に触れるチャンスはないのだという。
累積赤字は179億円に膨らむ
官民ファンドのうち、とくに赤字が目立つ4ファンドの18年度決算の合計累積損失(利益剰余金のマイナス)は1年前より6割増え367億円に達した。19年3月末の累損はクールジャパン機構が179億円と断トツ。農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)が92億円、海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)は64億円、海外通信・放送・郵便事業支援機構(JICT)は31億円の損失だ。
年間売上8億円。年間赤字は81億円、累積赤字が179億円である。これで、経営が成り立つとは不思議というほかはない。政府資金を元手に野放図に投資を続けてきたツケが回ってきた。
クールジャパン機構だけではない。官民ファンドそのものが行き詰まっている。いずれも、安倍政権のアベノミクスの看板ファンドとして設立されたものだ。14のファンド中、12が安倍政権下で業務を開始している。うち8つが17年度末時点で、累積損失を抱えていた。投資そのものがうまくいかず、政府資金を人件費や事務所経費が食い潰しているのが実情だ。
アベノミクスの失敗例ともいわれている、官民ファンド、もとい官製ファンドは店じまいするのが最上策との声もある。
(文=編集部)