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「高くなった」リンガーハット、決死の“370円”ぎょうざ定食開始の狙い…なぜ突然、深刻な客離れ?

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

ランチ刷新で事態の打開を図る

 そうしたなか、8月からランチを刷新することで、客足を回復させたい考えだ。特に注目したいのが、370円のギョーザ定食だ。定食で400円を切るのは珍しく、価格の安さを訴求できるのではないか。もしこの商品ばかりが売れるようなことになれば収益は厳しくなるだろうが、毎回、ギョーザ定食を注文する人は少ないだろう。ほかのメニューの注文も期待できるのではないか。370円ギョーザ定食はあくまで「客寄せパンダ」だ。

 これと同じ手法で成功を収めた外食店に「ケンタッキーフライドチキン」がある。ケンタッキーも「高い」というイメージが付いたことが原因で客数減に苦しんでいたが、税込み500円という低価格でセットメニューをランチタイム限定、期間限定で投入したことがきっかけとなり、客足を回復させることに成功した。

 この「500円ランチ」による復活劇は、昨年7月下旬~9月上旬のランチタイムに、オリジナルチキン1ピースとビスケット、カーネリングポテト(Sサイズ)、ドリンク(同)を、それぞれ単品で注文すると合計税込み920円のところ、セットにすると同500円で提供したことが始まりだ。

 これにより、それまで前年割れが続いていた既存店の客数は、7月が前年同月比4.8%増、8月が9.0%増と大きく回復した。その後も定期的に500円ランチを投入し、多くの月で客数の前年超えを達成することに成功している。

 これは、低価格で割安の500円ランチを客寄せパンダにして、まずは集客を図り、それで来店した客がケンタッキーの良さを知り、リピーターが増えたと考えられる。500円台のお手頃なランチメニューもあり、日常的に利用する人が増えていったとみられる。

 これと同じように、リンガーハットも370円のギョーザ定食で集客を図りたい考えだ。ケンタッキーとは期間限定メニューと定番メニューという違いはあるが、集客策の構造は同じだ。370円のギョーザ定食を客寄せパンダにして、徐々に長崎ちゃんぽんなどほかのメニューへの移行を図りたいところだ。

 リンガーハットはほかに、麺の量を少なくした長崎ちゃんぽんの定食も新たに投入する。これは「吉野家」が牛丼の「小盛」を新たに投入して集客に成功したことが参考になりそうだ。

 吉野家は3月から牛丼の新しいサイズとなる「超特盛」と「小盛」の販売を始めた。これがヒットし、超特盛は販売開始から1カ月で当初計画の2倍となる100万食を、小盛は同じく2倍の60万食を販売することに成功したという。

 小盛は「並盛」の4分の3のボリュームで、小腹を満たしたい人や女性、子ども向けに開発された。これが当たったわけだが、性別や年齢を問わず、幅広い層からの支持を獲得することに成功したようだ。固定客が多いのも特徴だとしている。

 これと同じように、リンガーハットも麺の量を少なくした長崎ちゃんぽんの定食を新たに投入することで集客をもくろむ。

 リンガーハットは客離れで苦しい状況にあるが、ランチを刷新することで事態の打開を図る。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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