先日閉幕した世界陸上北京大会で、日本が獲得したメダルはわずか1枚にとどまり、9枚を獲得した開催国・中国に大きく水をあけられる結果となった。
そんな結果の差を浮き彫りにするような話題が持ち上がっている。
中国のスポーツ用品大手、安踏集団(ANTA)が、海外メーカーのM&A(合併・買収)に野心を燃やしており、その候補として日本のミズノの名が挙がっているのだ。
8月22日付ニュースサイト「虎嗅網」記事によると、ANTAの丁世忠CEO(最高経営責任者)は2015年上半期の業績発表会で、海外メーカーの買収に興味を持っていることを表明。同社はかつてスポーツ用品で世界5位になる目標も明かしている。
ANTAの14年度の売上高は、89億2300万元(約1695億3700万円)。3兆円を超えるナイキと2兆円近いアディダスの壁は高いが、ベスト10以内の企業を買収すれば、「世界5位」が見えてくる。
「虎嗅網」がANTAの買収先の本命としているのが、世界3位のプーマだ。プーマは現在、グッチなどを展開する仏ケリングの傘下だが、直近の15年上半期のプーマ単体での売上高は15億9410万ユーロ(約2167億9,760万円)。前年同期比5.9%増だが、昨今のユーロ安人民元高を踏まえれば、堅調な伸びといっていいだろう。一方、ANTAの同期売上高は51億1000万元(約970億9000万円)と、買収先としてはかなりの大物だ。
そして、買収の2番手に挙げられているのがミズノだ。ミズノの15年3月期(14年4月~15年3月)の売上高は1870億7600万円で、プーマよりはANTAの身の丈に近いといえる。ただ、ミズノの筆頭株主は公益財団法人ミズノスポーツ振興財団で、16.3%を保有。同財団の理事長は水野明人社長自らが務めているので、創業家が支配している企業といっていいだろう。しかも、ほかの大株主は金融機関が主なので、買収のハードルは高い。
低くなるハードル
しかし、「ミズノの中国事業のみ買収」という条件を付ければ、ぐっとそのハードルは下がってくる。ミズノの中国進出は1996年と早く、ブランド認知度は低くないものの、中国事業はうまくいっているとはいいがたいのが現状。
「ミズノの中国事業は赤字に陥ったことで、近年では店舗の削減や取扱品目の絞り込みなど、事業の縮小化が目立ちます。効率化によって収益性はある程度改善したようでしたが、再び悪化に転じるようであれば、中国からの撤退か売却もあり得るかもしれません」(上海の日系コンサル会社社長)
そうなれば、ANTAが狙いにくる可能性もある。同社には、FILAの中国での商標権取得という成功例もある。しかし、中国事業の買収だけでは、目標の世界5位は遠い。やはりこれからは、規模を追いかけることになるだろう。
ANTAがそこまで買収にこだわるのには、もうひとつ理由がある。