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高杉康成「コンセプト・シナジーな経営戦略」

リクナビ問題、AI時代の恐ろしさを象徴…個人データを勝手にスコアリングされ不利益

文=高杉康成/コンセプト・シナジー代表取締役、経営学修士(MBA)、中小企業診断士

 今回の内定辞退予測の場合、過去に自社を応募してきた学生が、どういった企業(他社)、サイトを閲覧すると、内定辞退する可能性が高くなるかという分析をAI(人工知能)などに行わせ、それをもとに、今年応募してきた学生の内定辞退を予測するという論理です。この論理は、先ほどのコンビニのおにぎりの事例で示したペルソナとほとんど同じ論理であり、プロファイリングそのものなのです。

「何が問題か?」の基準がない

 さまざまなビッグデータを、AIを使って分析し、新しいビジネスにつなげていく。国も主導している成長戦略であり、企業も注目している新たな事業領域です。プロファイリングによるAIを使った予測ビジネスは、ビッグデータビジネスのなかでも非常に有望なビジネスです。なぜなら、費用対効果に直結する可能性を秘めているからです。

 例えば、就職情報サイト「マイナビ」が2018年に行った調査によると、企業の採用活動にかかるコストは平均で558万円、入社予定者1人当たりにかかる採用コストは平均で48万円となっています。プロファイリングによりこのコストが削減できるとなると、かなり大きな費用対効果が見込まれます。

 また、何千万円、場合によっては何億円も費用がかかる企業の商品開発においても、プロファイリングによって成功確率を上げる、あるいは失敗する確率を下げることができれば、大きな費用対効果を生み出すことができるのです。

 しかしながら、この類のビジネスにおいて、「どういったビジネスが問題となり、問題とならないか」はいまだに明確となっていないのです。今回の内定辞退予測サービスの場合、それによって学生が「不利益を被る可能性」があるという点と、個人情報保護法という法令を違反している可能性があるという点が問題となりました。

ブラックボックスの中でAIがすべてを判断

 では、先ほどの商品開発の事例は問題とならないのでしょうか。キャッシュレス化の浸透で、ますます利用頻度が高くなるICカードの購買履歴をもとに、スマホに広告を表示させたり、メールで案内を行う。プロファイリングを用いたビッグデータビジネスそのものです。

 あるいは、「信用スコア」は問題とならないのでしょうか。「信用スコア」とは、AIを使って個人の信用力を数値化することです。中国ではすでに導入され、年齢や学歴、職歴などの個人情報だけではなく、資産情報、購買履歴、SNS上の友達の数、質、発言などを使って個人の信用度をスコアリングします。

高杉康成/コンセプト・シナジー代表取締役、経営学修士(MBA)、中小企業診断士

高杉康成/コンセプト・シナジー代表取締役、経営学修士(MBA)、中小企業診断士

経営学修士、中小企業診断士、岡山県立大学地域創造戦略センター客員教授
神戸大学大学院 経営学研究科 博士後期課程中退(経営学修士、MBA)。日本屈指の高収益企業、キーエンスの新商品・新規事業企画担当を歴任。退職後、新規事業や新製品開発、ビジネスの付加価値向上などの分野において、大企業から、中小企業まで幅広い業種・企業の指導に携わる。一般消費者向けの小売店、ネット販売企業などにおいても、ビジネスモデルの転換、収益力向上、新製品開発などで数多くの実績がある。
最近では、次世代自動車(CASE)、次世代通信、ロボット、AI、IoT、VR・AR、農業クラウドサービスなど、さまざまな最先端・成長業界における新規参入の支援を、上場企業をはじめ全国の企業に行っている。こういった企業への指導実績から、テクノロジーについても非常に詳しく、最先端分野の知見を有している。専門分野は、ブルーオーシャン戦略、事業戦略、技術経営(MOT)、Webマーケティング。
コンセプトエナジー株式会社

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