リクナビ問題、AI時代の恐ろしさを象徴…個人データを勝手にスコアリングされ不利益
リクルートキャリアが運営する就職情報サイトの「リクナビ」がビジネスとして行った「内定辞退予測」の問題がクローズアップされています。就職を希望する学生に企業が内定を出す際、内定を辞退する可能性を予測してくれるサービスが、使い方によっては学生に不利益を与え、かつ、学生の個人情報を無断で使用したという個人情報保護法の観点から問題となっています。
ニュースや新聞、ネットメディアなどでたびたび取り上げられるため、国民の関心も高いと思います。実は、この問題、就職を希望する学生だけの問題ではなく、国民全体にも近い将来起こりうる深刻な問題なのです。なぜなら、この問題の本質は、ビジネスにおけるマーケティングの問題だからです。
マーケティング分析のなかで、顧客をなんらかの基準で分類(S:セグメンテーション)し、標的化(T:ターゲティング)して、位置づけ(P:ポジショニング)することは基本中の基本で、有名な経営学者フィリップ・コトラーがSTP理論でも提唱しています。
このSTPを考える上で、さらにイメージを膨らませるために行う分析として、「ペルソナ」という手法があります。これは、ターゲットとする顧客のイメージを、単なる性別、年齢、所得といった属性による分類で行うだけではなく、その人の行動特性をもイメージしていく手法です。例えば、コンビニエンスストア向けの商品開発を考える際、「ターゲットは30―40代のサラリーマンで、毎日来店する人」というセグメンテーションは前者の分類となります。
ところが、これだけだと顧客のイメージがつけにくいため、
「35歳のサラリーマンのAさんは毎朝、〇〇駅で下車後、近くのコンビニX店を利用する。ジョギングが趣味であり、マラソン大会にも数多く参加し、最近はタイムを気にし始めている。そのため、日々のカロリー摂取にも気を使うようになり、昼食はおにぎり1個と野菜サラダと決めている」
というように、ペルソナ手法では、ターゲットをよりイメージしやすいようにするのです。そして、これを用いて消費者の行動を予測し、商品開発に活かしていくのです。
このペルソナ手法を進化させ、ウェブサイトの閲覧履歴や購買履歴等の行動データ(ビッグデータ)をAI(人工知能)やコンピュータが分析し、その人の行動などを自動で予測することを「プロファイリング」といいます。