現在、スポーツウェア大手であるデサントの株価の下落傾向が目立っている。3月、伊藤忠商事による敵対的TOB(株式公開買付け)が成立した後、一時、株価は3000円目前に迫ったものの、その後、株価は大きく下げ8月末の時点での株価は1400円台になっている。
デサントの株価低迷の背景には、同社の業績悪化懸念の高まりがありそうだ。世界経済の減速傾向が徐々に鮮明となるなか、同社が韓国事業に依存してきたことの影響は大きいだろう。加えて、敵対的TOBによって同社の組織全体が混乱していると考えられることも、先行きへの懸念を高める一因と考えられる。
デサントの現経営陣は、収益源を分散するために中国事業の強化を重視している。ただ、中国経済は成長の限界を迎えつつある。ここから先、中国の個人消費が大きく伸びる展開は容易には想定しづらい。韓国事業に依存して収益を獲得してきたデサントが、どのように経営を安定させることができるか、先行き不透明感は高まっている。
デサントの株価下落の主な背景
4月から8月末の間に、デサントの株価は約50%下落した。この間、東証株価指数(TOPIX)の騰落率は約5%だった。株価の下落には、さまざまな要因が影響している。
まず、1月末に伊藤忠商事がデサントに対するTOBを発表したことは大きかった。伊藤忠は、前日の引け値に対して50%のプレミアム(価格の上乗せ)をつけた2800円を買い付け価格に設定した。これを受けて、株価は急上昇した。3月にTOBが成立した後、経営改革への期待などから一時株価は上昇基調で推移し、4月に入ってからは下落に転じた。株価上昇を受けて利益を確定するために同社株を売却する投資家が増えたことが推察される。
ただ、その後も同社株は下落傾向にある。その要因のひとつとして、デサントの業績が悪化するとの懸念が高まっていることがあるだろう。
同社の特徴の一つに、海外売上比率の高さがある。2019年度第1四半期が終了した時点で同社の海外売上高比率は65%だ。わが国の企業全体を見ても、この水準は比較的高い。海外売上比率が高いということは、収益が世界経済全体の変化に左右されやすいということだ。
昨年来、世界経済の先行き不透明感が高まっている。その要因のひとつとして、米中の貿易摩擦への懸念は大きな影響を与えている。加えて、中国では投資に依存してきた経済成長が限界を迎えた。中国政府は景気刺激のために公共事業の積み増しや補助金の支給などを行ってきたが、今のところ目立った効果は現れていない。それが同社の業績懸念を高めている。