企業は、2つのタイプに大別できる。
「組織図はあるが、ただそれだけ」という企業と、組織図に魂を通わせている企業だ。魂とは、企業理念のことである。勝ち残る企業に共通した特徴は、生きた企業理念があることだ。
一口に企業理念といっても、
(1)不在型
(2)暗黙型
(3)形骸型
(4)活用型
の4種類がある。
(1)は、そもそも企業理念が存在しないタイプで、(2)は企業理念が社長の頭の中にはあるが、社員に対して発信されていない状態だ。(3)は企業理念が存在するものの、時々目にする程度で使っていない。ほとんどの企業は、この形骸型が当てはまる。
(4)は、企業理念が壁に貼られているなど、さまざまな「見える化」が図られ、社員に対して十分に発信されている上に、経営や業務上の判断をする際に「仕事上の道具(ワーキング・ツール)」として使われているという型である。
私の長年の経験からいうと、活用型の企業理念を持っている企業は、全体の5%程度しかない。勝ち残る企業は、まさにこの少数派だ。
企業理念があるだけでは、自社を勝ち残る企業にすることはできない。企業理念の後に目標、戦略、戦術が続かなければ、会社は良くならないからだ。「企業理念をつくっただけでは会社は良くならないが、企業理念のない会社は長続きしない」ということである。パナソニックの創業者・松下幸之助氏は、「企業の成功の50%は、理念で決まる」と喝破している。
人は大きなことを信じた時に大きな仕事をする。社員が、売り上げや利益などの目標を追求する時に、「そもそも、我が社は何をする会社なのか。何をすることによって、世のため人のためにお役に立つのか」という使命感(ミッション)や、「我が社はどういう会社になりたいのか」というビジョン、さらに「我が社の社員の行動はどうあるべきか」という価値観(バリュー)から成り立つ「大きなこと」即ち企業理念があると、大きな仕事を果たす。逆に、理念や目的なき目標は単なるノルマと化してしまう。
J&Jの「我が信条」とは?
私が12年間勤め、そのうち8年は日本法人の社長として在籍したジョンソン・エンド・ジョンソン(以下、J&J)というグローバルカンパニーがある。この会社には「我が信条(Our Credo)」と称する企業理念がある。内容は、4つの責任から成り立っている。