三菱重工、大型客船建造の巨額損失をバネに解体的改革始動 仏アレバは絶対に買うな!
10月に入り、三菱重工業が戦略的な動きを強めている。
1日に長崎造船所(長崎市)から2つの事業会社を切り出し、三菱重工船舶海洋と三菱重工船体の2社を設立した。前者はLNG(液化天然ガス)船とLPG(液化石油ガス)船のガス運搬船を集中的に建造し、後者は船体のパーツを他社からも受注するとしている。
この動きは、造船を祖業としている三菱重工にとって大きな戦略的転換だ。2012年に策定した3カ年の事業計画では「高付加価値船舶」建造を掲げ、大型客船と資源探査船とを新たな柱に育てる戦略だった。しかし、今回の発表で三菱重工船舶海洋社長の横田宏氏はこれを「戦略的に失敗だった」と率直に認めた。
実際、客船で最初の大型受注となった大型客船2隻の建造では、大幅な設計変更を強いられ、昨年度までに約1300億円の特別損失を計上した。2隻目がさらに竣工予定の遅れが見込まれている。このほか、資源探査船分野も難航している。
横田社長は、「同型船、同型ブロックを受注生産するビジネスモデルで、長崎の基幹産業の造船を発展させる」と抱負を語った。コンテナ船や自動車運搬船などからも撤退して、需要拡大が見込めるLNG運搬船などに特化し、コスト競争力を高めるとして明確に路線変更を宣言したのである。
メリハリが利いた事業取り回し
三菱重工メカトロシステムズ(MHI-MS)という子会社の動きも急だ。同じく1日に電気集じん装置、溶剤回収装置の事業を移管した。移管した相手も同日付で発足した三菱日立パワーシステムズ環境ソリューションという新会社で、なんと競合する日立製作所との共同資本会社だ。戦略的合理性があれば、従来あった競合関係にも目をつむって手を組むわけである。
さらに日本国外に目を転じれば、「欧州・中東・アフリカ総代表」を1日に新設し、同地域の事業推進体制を強化するとも発表し、インドでは有力財閥マヒンドラ&マヒンドラと農機分野で手を組んだ。
あれやこれやで、三菱重工の今秋は忙しい。この早さと果断さの裏には、相当な覚悟と不退転の戦略的な覚悟があると私には見える。
実はこれらの戦略的な流れは、昨年発表された「14年事業計画」からきているのだ。その計画とは、大企業にありがちな総花的な中期経営計画の域を出て、同社がめざす近未来を随分明確に描き出している。