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町田徹「見たくない日本的現実」

日本のノーベル賞受賞、5~10年後に激減の兆候

文=町田徹/経済ジャーナリスト

日本の基礎研究が息切れの気配

 過去16年間のようなノーベル賞の受賞ラッシュは、今後も5年か10年程度続くかもしれない。素粒子物理学では、小柴氏がニュートリノを発見し、梶田氏が質量(重さ)を持つことを実証したが、それだけでは宇宙の質量の現状を説明できない。いわゆるダークマターの解明に、日本の“お家芸”が力を発揮する可能性は大きい。

「生理学・医学賞」の分野でも、今回、大村氏が受賞した微生物・寄生虫は、有望な分野だ。また、12年に受賞した山中伸弥・京都大学教授の万能細胞iPS細胞の実用化や、立体培養などでも日本の研究者が力を発揮している。

 さらに、今年は大本命といわれながら受賞を逃した「化学賞」では、日本の研究者が世界に先駆けて大きな業績を残しているリチウムイオン電池の開発や人工光合成の分野がある。

 ただ、気掛かりなのは、そうした日本の基礎研究が息切れの気配をみせていることだ。10年後には、また99年以前のように受賞ペースが落ち、受賞者は「数年ぶりの快挙」「数10年ぶりの快挙」と持て囃される時代に逆戻りしかねないという。

 背景にあるのは、日本の経済力の低下だ。国単位でみると、研究開発は、経済力の勃興・拡大を追いかけるように進歩し、先進国の模倣に始まって次第に独自の基礎研究分野を広げながら、ノーベル賞の受賞につながるような大きな業績に至るパターンがある。そして、経済成長力が鈍るに従って、受賞者が減っていくのだ。

 旧科学技術庁の資料をみると、日本は2000年当時、ノーベル賞の自然科学分野3賞の受賞者が6人と世界13位だった。が、昨年まで14年間で16人増えて、累計で米国(52人増の250人)、英国(9人増の78人)、ドイツ(6人増の69人)、フランス(5人増の31人)に次ぐ第5位に浮上した。2000年当時は、日本より上位にスウェーデン、スイス、オランダ、ロシア(旧ソ連を含む)など8カ国があったが、それらの国々は14年間の受賞が0~3人にとどまり、日本が追い越したのである。

 しかし、日本経済は失われた20年を経験し、研究支援は他国のようなペースで増えなくなった。しかも、すぐおカネ儲けにつながる応用研究が重視され、ノーベル賞に値するような人類のためになる基礎研究には縁遠いテーマに取り組む研究者が増えている。日本の研究者の論文発表数が減少する傾向もみられるという。

町田徹/経済ジャーナリスト

町田徹/経済ジャーナリスト

経済ジャーナリスト、ノンフィクション作家。
1960年大阪生まれ。
神戸商科大学(現・兵庫県立大学)卒業。日本経済新聞社に入社。
米ペンシルべニア大学ウォートンスクールに社費留学。
雑誌編集者を経て独立。
2014年~2020年、株式会社ゆうちょ銀行社外取締役。
2019年~ 吉本興業株式会社経営アドバイザリー委員
町田徹 公式サイト

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