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町田徹「見たくない日本的現実」

日本のノーベル賞受賞、5~10年後に激減の兆候

文=町田徹/経済ジャーナリスト

 さらに、公的な研究機関や大学の研究者のポストは終身雇用や長期雇用が前提でなくなり、数年単位に雇用期間を区切ったポストが増えている。短期間で大きな成果をあげることが、研究者の生き残りに重要な要件となっており、独自の道を時間をかけて追及するような余裕がなくなっているというのである。極端な例だが、STAP細胞をめぐる不正騒ぎの底流に、こうした余裕のなさがあったことは否定できないだろう。

 今回、中国中医科学院の終身研究員が、大村氏と同じ「生理学・医学賞」を受賞し、中国人として初めて自然科学分野のノーベル賞の栄誉に輝いたことは、経済に続いて研究開発の分野でも中国が大きな飛躍を見せる兆しなのかもしれない。

 研究者の能力や業績に対する厳格な評価は必要だが、あまり拙速を求めては研究者の将来の芽を摘むリスクがある。民間企業の研究所では容易ではないだろうが、少なくとも国費や公費を投入する研究所では、十分な時間をかけて基礎研究に取り組む環境を確保するなど、日本として抜本策を講じる時期を迎えている。
(文=町田徹/経済ジャーナリスト)

町田徹/経済ジャーナリスト

町田徹/経済ジャーナリスト

経済ジャーナリスト、ノンフィクション作家。
1960年大阪生まれ。
神戸商科大学(現・兵庫県立大学)卒業。日本経済新聞社に入社。
米ペンシルべニア大学ウォートンスクールに社費留学。
雑誌編集者を経て独立。
2014年~2020年、株式会社ゆうちょ銀行社外取締役。
2019年~ 吉本興業株式会社経営アドバイザリー委員
町田徹 公式サイト

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