人口は減り続け、誰もが洗濯機を所有しているにもかかわらず、街角の「コインランドリー」の数は、ここ20年間で増え続けている。
厚生労働省が発表した「コインオペレーションクリーニング営業施設に関する調査」によれば、2013年のコインランドリー店舗数は1万6693となっている。以降は厚労省による調査が実施されていないが、16年に創刊されたコインランドリー情報誌「ランドリービジネスマガジン」によると、15年は1万8000店舗、17年は2万店舗と推計されている。コンビニエンスストア業界で最多の店舗数を誇るセブン-イレブンが2万1034店(19年8月末現在)なので、その多さがわかるだろう。
なぜ、今もコインランドリーが増え続けているのか。同誌編集長の中澤孝治さんは、次のように語る。
「13~14年頃から、コインランドリーは投資ビジネスとして注目を集めるようになりました。当初は利回り20%とも言われていましたが、競合店の増加に店舗経営の難しさも相まって、今は10%あるかないか、といったところです。設備投資に2000万~3000万円かかるため、『人件費をかけずに簡単に儲けよう』という発想だけでは、なかなか難しいものがあります」(中澤さん)
投資ビジネスとしてだけでなく、近年は本業のリスクヘッジ、つまり企業が“副業”としてコインランドリーを始めるケースが増えているという。コインランドリーのチェーンと手を組み、書店やカー用品などの既存店舗の駐車場の空きスペースに開業するという併設タイプも目立っているそうだ。
「本業の店のユニフォームをコインランドリーで洗濯し、空いた時間に客に利用してもらえるという側面もあります。また、コインランドリー単体では人件費の問題で常時人を置くのは難しいですが、併設型であれば必要に応じて人員を配置し、コインランドリーを利用するのが初めてという人に使い方を案内することも可能になるのです」(同)
主婦など女性客をターゲットに
特に客足を集めているのが、需要の変化を敏感に捉えたコインランドリーだ。
「アレルギー対策として寝具のケアに注目が集まっており、布団などの大物洗いの需要が増えています。高層マンションでは、景観や安全性の問題で外干し禁止になっているケースもあるようです。また、自宅に浴室乾燥機や洗濯乾燥機などの設備があるにもかかわらず、『時間がかかる』『シワがきつく付いてしまう』などの理由で使わずに、コインランドリーを利用する人も多いようです」(同)
かつてコインランドリーといえば銭湯の横に併設され、主に単身男性が暗い顔で洗濯が終わるのを待っている施設……というイメージがあった。それが、近年では共働き世帯の増加も相まって、主婦などの女性客をターゲットにした店舗が増えているそうだ。
「店内の掃除が行き届いていることは、入りやすさの重要なポイントです。また、大物洗いの場合はクルマでの利用がメインになるので、特に郊外型店舗では駐車場の広さや停めやすさも店に通う決め手になっています」(同)