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高橋潤一郎「電機業界の深層から学ぶビジネス戦略」

経営統合・買収で業績悪化した企業、売上が2千億円も増えた企業

文=高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役

レスターホールディングス

 19年4月1日付で、UKCホールディングスとバイテックホールディングスが経営統合した。もともとUKCは、2009年にともにソニー系の上場電子部品商社だったユーエスシーと、共信テクノソニックが経営統合するかたちで発足した。つまり源流をたどれば、ユーエスシー、共信テクノソニック、バイテックという3社が今では合体していることになる。

 UKCの19年3月期売上高は2,057億7,100万円、バイテックは今年2月時点での19年3月期売上高見込みは2,100億円だった。両社が経営統合したレスターとしての初年度となる20年3月期は売上高4,100億円を予想している。

 さらに5月には、菱洋エレクトロの筆頭株主だった投資会社のシンプレクス・アセット・マネジメントが保有していた菱洋エレクトロの株式を、レスターが取得している。これにより菱洋エレクトロの筆頭株主にレスターが躍り出た。同社は菱洋エレクトロ発行済み株式の21.89%を握る筆頭株主となっている。現段階では、レスターはまだ菱洋エレクトロの筆頭株主にすぎないが、しかし筆頭株主である。単純合算するのは適切ではないが、3社の売上高をすべて合わせると、上場国内最大手という規模が見えてくる。

加賀電子

 加賀電子は、富士通系列の電子部品商社、富士通エレクトロニクスを買収することで18年9月に合意した。

 買収は3段階に分けて行われる。加賀電子は、まず19年1月1日に富士通エレクトロニクス発行済み株式の70%を取得、さらに20年12月に15%を買い増し、最終的には21年12月に完全子会社化するという計画。

 直近の19年3月期では、加賀電子は2,927億7,900万円、富士通エレクトロニクスは同1876億2700万円だった。買収の寄与により加賀電子の20年3月期売上高予想は4,300億円となった。

丸文

 丸文の19年3月期売上高は3,266億9,400万円だから、加賀電子やレスターとなった旧UKCを上回る。しかし合併により規模が拡大する両社に対して、丸文は逆に昨年10月に日本サムスンの販売特約店業務をトーメンデバイスに譲渡したことに伴い、サムスン電子製品の販売がなくなり、今20年3月期は売上高2,915億円にとどまる見通し。加賀電子やレスターに逆転を許す。

 さらに丸文は、テキサス・インスツルメンツ(TI)との販売特約店契約についても20年9月末で打ち切りになることが決まっている。19年3月期実績では、TI製品の販売は532億6,700万円あり、丸文全体売上高の16.3%を占めていた。20年10月からはこの部分がさらに丸文から落ちる。打開策を模索していくが、このままでは上位との差はさらに開く。

(文=高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役)

高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役

高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役

業界紙記者を経て2004年に電機業界の情報配信会社、クリアリーフ総研を創業。
雑誌などへの連載も。著書に『エレクトロニクス業界の動向とカラクリがよ~く
わかる本』(秀和システム)、『東芝』(出版文化社、共著)ほか
クリアリーフ総研

Twitter:@clearleafsoken

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