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ドンキ、「常識をあざ笑う」経営で30期連続増益…買収でことごとく成果出す“凄み”

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授

 もう一つ重要なのが、PPIHが人々に買い物の愉しみを実感させ、共感を得てきたと考えられることだ。ドン・キホーテの店舗前を歩いていると、海外からの観光客をはじめ“圧縮陳列”に興味を示し、ついつい店舗に足を踏み入れる人が多い。これは、同社の商品の見せ方が多くの人の心を引き付けていることを示す良い例だ。その上で人々が低価格で商品を手に入れ、それを使う快適さなどを実感できたからこそ、PPIHは成長を続けることができた。そうした取り組みの結果として1989年3月の第1号店開業から2019年6月期まで、PPIHは30期続けて営業増益を実現した。

小売り・物流革命の精神

 私たちがさまざまな業界の動向などを考えるとき、小売業であれば百貨店や総合スーパーというように、特定のセクターを念頭に置くことが多い。それによって、同業他社との比較などが容易になる。この発想は、経営者にも当てはまるだろう。

 一方、PPIHの経営を見ていると、従来の発想を超えた広がりが感じられる。特定のセクターやビジネスモデルへの固執が感じづらいともいえる。ある意味、PPIHは常識にとらわれてこなかった。PPIHのビジネスの根源は、ディスカウントしてモノを販売することにある。その上で、個々の店舗が立地する場所に合った運営を重視している。

 同社は、ディスカウント・ビジネスの競争力を引き上げることを通して、自社のエコシステム(生態系)を拡大しようとしているように見える。PPIHが買収したユニーの事業運営を見ると、それがよくわかる。ユニーの社長には、長崎屋のメガドンキへの転換を成功に導いた関口憲司氏が就任した。すでにPPIHはユニー傘下のアピタやピアゴをメガドンキに転換し、成果を上げている。

 従来、ユニーはチェーンストアとして事業を運営してきた。しかし、環境の変化に直面したユニーは、客離れを止めることができなかった。背景にはさまざまな要因が考えられる。デフレ環境下での消費者の節約志向の高まりや、EC(電子商取引)の拡大などの影響は大きかったはずだ。

 これに対して、PPIHは、店舗という“リアル”な世界(店舗空間)を変え、それに合わせて物流などを変革することによって、アピタなどの売り上げを増加させている。これは、重要な変化だ。PPIHはリアルな世界を変え、モノを買う欲求と、消費行動という“コト”を楽しむ心理を同時に満たしているといえる。

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