「販売店の労務環境改善のための値上げ」
ところが、業界最大の発行部数を誇る読売新聞は昨年12月、25年ぶりに今年1月からの値上げを発表した際、次のように理由を説明した。
「改定に伴う増収分の大半は、販売店の労務環境改善に充てる。民主主義を支える戸別配達網を維持し、ご自宅に毎朝、新聞をお届けするため、誠に心苦しいところですが、ご理解をお願いいたします」
この論理は新聞業界に衝撃を与えた。これ以降、各社は値上げの理由を読売と似たような論法で説明し始めた。例えば、東北6県のブロック紙河北新報は次のように発表した。
「購読料の本体価格を1994年1月以来、25年間据え置いてきましたが、この間新聞製作の原材料費や輸送コストの上昇など業界を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。新聞販売店の配達員不足も深刻です。高齢者の見守り支援活動など地域の安全に配慮しながら戸別配達網を維持するため、販売店の安定した人員確保が急務になっています。
河北新報と販売店は徹底した合理化と経費削減に努めてきましたが、購読料金改定に踏み切らざるを得ないと判断しました。誠に心苦しい限りですが、新聞を毎日確実に届けるために何卒ご理解をお願いいたします」
確かに、全国約2万店の新聞販売店の労務環境の悪化は業界で問題視されている。配達員の高齢化と人員不足、販売店主の後継者不足などから労働環境は悪化の一方だ。特に人口減少の著しい地方では時給1300円以上で募集しても、必要人数が集まらないことはざらの状況だ。
だが、そもそも販売店と新聞社は別会社だ。販売店の配達員や拡張員の給料を新聞社が払っているわけではない。新聞の利益構造は少々複雑だ。新聞の売り上げはすべて新聞社に入る。新聞社は新聞代収入の半分以下を配達手数料として販売店に支払う。当然、それだけでは足りないので、販売店はこれに加えて折り込みチラシなどで収入を賄っている。当然、折り込みチラシの収入は配達部数に大きく左右される。
値上げの本当の理由は?
千葉県内の全国紙新聞販売店の店主は話す。