「販売部数を増やすことが販売店にとっては至上命題です。折り込みチラシの減少を防ぐにはそれが一番です。値上げによって万が一にも部数減になることは望ましくありません。値上げ分の利益がすべて転嫁されても、販売店の経営や労働状況が変わるのか疑問が残ります」
実は今回の値上げに関して、ある地方紙では労使間で賛否をめぐるやり取りがなされていたという。同地方紙の労組幹部は話す。
「会社上層部から『読売が値上げに舵を切った。弊社も同じ理由で消費増税前に購読料値上げを行う必要がある』と経営協議会の席上、説明がありました。入社以来ベアゼロが続く10年目の社員がいるくらい社の経営は厳しい状況なのですが、それ以上に販売店の状況は悲惨です。販売店の社員は労組組合員ではありませんが、これを機に購読料値上げと合わせて、販売店の労働環境改善を図ってはと提案をしたんです」
ところが、会社側の返答は驚きのものだったという。
「会社側は『販売店は別会社だ。その経営や労務に新聞社が口を出すことはルール違反だ。支援はするが介入はしない』と言うのです。じゃあ、何のために値上げをするのか。この状況下で購読料を上げれば、読者の新聞離れが一層進むのではと懸念を伝えました。それは会社にとっても、販売店にとっても将来的にプラスになりません。
つまるところ今回の値上げは、バブル世代より上の世代の人件費が大きな負担になっているので、早急にそれを賄わなければいけないということです。そもそも好景気の時に入社し毎年ベアのあった世代です。リーマンショック以降に入社した社員とは明らかに生涯賃金が異なります。
子供を私立の学校に入れ、大きな一軒家を買っていれば、いくらあっても足りないでしょう。経費削減や早期退職、退職金抑制なども行われているようですが、それでも回らないということです。
実際に編集や制作、営業の実働部隊の氷河期世代以下の若手や中堅は今回の値上げを冷ややかに見ていますよ」(前出の労組幹部)
「値上げしないでがんばります」
消費増税前日の9月30日、Twitter上では朝日新聞の関連会社が製作した販売店用の折り込みチラシが話題になっていた。チラシには「朝日新聞は値上げしないでがんばります」と書かれていた。
これに対して、ネット上では次のような指摘がなされた。
「軽減税率対象内でこれを言っちゃうと確かにつっこみ不可避ですね」
「消費税上がるのに据え置きでがんばる企業が複数あるので、ここは控え目にしていて欲しかったです」
だが、本当に指摘されるべきなのは上記の表にあるような、軽減税率対象内にもかかわらず実質的に値上げを行った社なのではないか。今回の値上げが、各社の主張する配達網の維持につながるのか継続的に見ていく必要がある。
(文=編集部)