高知市内に「ひろめ市場」という屋台村がある。地元客、観光客で賑わうスポットで、和洋中さまざまな飲食店をはじめ鮮魚店、雑貨店など60余りの店がひしめく。カツオのたたきや寿司、あおさの天ぷらなど好きな食材を買って飲食エリアの共同テーブルで食べる。相席が当たり前の世界で、土佐弁を話すおおらかな地元の人との交流スポットでもある。皿鉢料理や酒が振る舞われる「おきゃく」という宴会は土佐独特のものだ。
観光は後進県?
そんな魅力満載の高知だが、調べてみると観光では“後進県”だった。むろん、数字上だけの話である。観光庁の観光統計に「宿泊旅行統計調査」がある。その14年の年間値(確定値)をみると、国内全体の延べ宿泊者数は4億7350万人(前年比+1.6%)だ。その上位には、東京(5426万人)、北海道(3098万人)、大阪(2837万人)、千葉、静岡、沖縄といった都道府県が並ぶ。高知はなんと全国44位で、わずか290万人である。下は徳島、佐賀、奈良だけ。外国人の延べ宿泊者数も同様で、高知はわずか4万人で、こちらも44位である。
ちなみに県の統計では、13年の県外からの観光客数は407万人(前年比6%増)で、『龍馬伝』が放送された10年以来3年ぶりに400万人の大台を突破した。県は、ドラマや映画で高知県の露出が増えたことに加え、観光キャンペーン「リョーマの休日」を繰り広げるなかで「龍馬パスポート」などの官民一体の観光施策が功を奏したと分析している。
「観光客数はまだまだ少なく、地元からすればもっと増やしたいでしょうが、訪れる側からすれば、これほどの穴場はありません。ほかの有名観光地のように海外の団体客でごった返すこともなく、豊かな大自然をのんびりと楽しみ、おいしい食べ物や酒を堪能するには、今ぐらいのレベルがありがたいです。いたずらに客数を増やす施策ではなく、類いまれな観光資源を守りながら、適正規模の観光客を受け入れるモデルを構築してもらいたいですね。魅力満載の土地だけに、必ずリピーターが増えます」(ジャーナリスト)
高速道路をはじめ、県内のインフラ整備はまだ不十分である。山間部の道路は狭いうえに曲がりくねっているところが多く、ドライバーは気が抜けない。だが、それだからこそ、大型の観光バスが列を連ねることもなく、じっくりと観光を楽しむことができる。「奇跡の清流」仁淀川や「最後の清流」四万十川の美しさは、ほかの観光県にはない貴重な財産だ。観光客が殺到すれば、そんな宝物に傷が付きかねない。
高知の良さを大事にしながら、新たな観光モデルがつくられることを期待したい。
(文=編集部)