利益減少の要因
このように、19年3~8月期は働き方改革で厳しい結果に終わってしまったが、もちろん同社は手をこまぬいていたわけではない。近年は季節メニューに力を入れており、それにより顧客を飽きさせないようにして来店を促している。
具体的には、4月に「大宮担々麺」と「黒酢しょうゆ冷し麺」、5月には「ガパオ汁なし麺」、6月に「ごま味噌冷し」を投入し、集客を試みている。だが、働き方改革の影響には抗えなかった。
19年3~8月期は売上高が伸び悩んだが、利益が減ったことも懸念すべき事態だ。前述の通り、営業利益は前年同期比11.0%減の22億円に落ち込んだわけだが、既存店売上高の不振に加え、コスト上昇が大きく響いた。
キャベツや白菜などの購入価格が下がった一方で、小麦粉やニラなどの価格が上がったという。他方で、3月から期間限定で実施した生ビールを40円値下げして290円で提供するキャンペーンが影響し、売上原価率は前年同期(27.0%)よりも高い27.2%へと上昇した。
売上高販管費比率も上昇した。前年同期は60.8%だったが、人件費のほか、電気代・ガス代など光熱費の増加が影響し、62.0%にまで高まった。
こうして営業利益は減少、売上高も減少したため、当然に売上高営業利益率も低下した。前年同期は12.1%だったが、10.8%にまで低下した。それでも10%超というのは、同業種のなかでは極めて高い数値ではあるが、油断はできない。
消費増税で正念場
同社はこうしたなかで消費増税を迎えた。日高屋では全店で価格改定を実施し、一部の商品を値上げした。ただ、人気メニューの「中華そば」(390円)や「餃子(6個)」(230円)、「生ビール(中)」(290円)などは、税込み価格を据え置いた。店内飲食の場合、実質値下げとなる。これらで割安感を演出するとともに、ほかの商品で増税分を吸収したい考えだ。
ただ、消費増税に伴い導入された軽減税率によって、日高屋の客離れに拍車がかかりそうだ。軽減税率では、酒類を除く飲食料品が、持ち帰りの場合は税率8%に据え置かれるため、酒のつまみをコンビニエンスストアなどで買って家で飲む「家飲み」が増えるとみられている。また、軽減税率が適用されない酒類は、9月までにスーパーマーケットなどで安売りしていた時に買いだめした消費者が少なくないとみられるため、特に当面は家飲みが増えそうだ。
そこで日高屋では、10月1日に合わせて餃子を刷新し、「餃子(6個)」(230円)を31日まで店内飲食に限り170円で販売する。家飲みへの移行を食い止め、顧客をつなぎとめたい考えだ。
ハイデイ日高は連続増収が止まったことで今後の成長が懸念される。そんななかでの消費増税という逆風も吹き、真価が問われる場面となっている。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。