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金策に詰まる英夫氏は08年頃から昭夫氏が肝いりで設立した財団法人の基本財産にも手を付けていた。「鈴渓学術財団」からは3億8900万円、「盛田国際教育振興財団」からは5億3200万円が貸付金の名目で前出の盛田アセットに融通された(両財団は13年末に解散)。その盛田アセットはJFLAの筆頭株主にあったものの、資金繰りが厳しかったに違いない、保有するJFLA株を次々と売却していった。
英夫氏個人の懐事情も厳しくなる一方だった。とはいえ、金遣いの良さは相変わらずで、14年春にはクレジットカード会社に対し約1100万円が未払いになってしまう。また昭夫氏死後に相続した名古屋市内の豪邸とは別に、英夫氏は東京・永田町の高層マンションを借りていたが、その家賃約600万円も滞納。いずれも裁判沙汰となり、英夫氏は反論すらせず敗訴。同年9月以降はクレジットカード会社にJFLAからの役員報酬を差し押さえられてしまう有り様だった。今年3月には前出の豪邸も手放している。
そんな窮状の英夫氏に対し実母・良子氏以外、一族は冷淡だった。スキー場開発に始まる英夫氏の散財ぶりを見て、故昭夫氏不在の間に家業を守った和昭氏は長男・宏氏とともに英夫氏から距離をとった。そして盛田グループから酒類卸会社「イズミック」とコンビニチェーン「ココストア」を引き取り、新たに「LICKグループ」(現MICSグループ)を立ち上げた。当然、和昭・宏両氏は英夫氏に救いの手を一切差し伸べなかった。大手チェーンに押され、ココストアは今年9月、ファミリーマートに身売りしており、和昭氏らにも余裕はなかったといえる。盛田一族の遠縁が経営する会社には敷島製パン(名古屋市)もあるが、同社も英夫氏の救済に動いた気配はまったくない。
今年3月には実母の良子氏が死去し、英夫氏はもはや孤立無援。お家再興は夢のまた夢で、今や不名誉にまみれたままの完全なる没落が現実味を増している。
(文=高橋篤史/ジャーナリスト)
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