民放テレビ局5社は10月26日、テレビ番組を無料で見られるサービス「TVer(ティーバー)」をスタートさせました。インターネット上で各社が週に10番組程度の最新コンテンツを広告付きで配信するというものです。
背景には、各社が試みた有料のオンデマンド・サービスがいまひとつの状況であることに加え、「dTV」や「HULU」など国内の定額動画ストリーミング・サービスがスタートし、6500万人のユーザーを抱える同分野世界最大の「Netflix(ネットフリックス)」、さらにネット通販世界最大のアマゾンがプライム会員に無料見放題という破格のサービスで上陸してきたことへの危機感があるのではないでしょうか。
下手をすると、これらの定額ストリーミングにオンデマンド・サービスの主導権をとられ、番組を安く買い叩かれてしまいかねません。
ネットフリックスの契約者数の伸びを見ると、あっという間に日本市場をも飲み込みそうに感じてしまいます。しかし、ネットフリックスもアマゾンも乗り越えなければならない3つの壁があります。
それは「番組は無料」という日本の消費者の意識の壁、すでにある日本のサービスとの競合の壁、そして番組を提供するテレビ局との交渉力の壁です。
本稿では、続々と日本市場へ進出する海外の定額ストリーミングサービスが、これら3つの壁を乗り越えて、日本の競合サービスやテレビ局を脅かす存在になるのかについて検証していきます。
「番組は無料」の壁
ネットフリックスが米国で快進撃を遂げた背景には、ケーブルテレビが主流で有料放送利用者が9割を占めているという同国の特徴があります。日本のように「番組を無料で見るのが当たり前」ではないのです。多チャンネルサービスの加入者は昨年で800万世帯を超える程度、また衛星放送のスカパーJSATとWOWOWを加えても契約者は、約1420万世帯と全体の3割に届いていません。料金が高く、ケーブルテレビの番組視聴契約をやめてネットフリックスに移る、いわゆるコードカットが起こってきた米国とはかなり背景が異なります。
先行するHuluは11年に月額1480円でスタートしたものの契約数が伸びず、1年を待たずに月額980円に値下げを余儀なくされました。また14年には日本向けサービスを日本テレビに売却し、なんとか契約数は100万に届いたようですが、登場した時ほどの勢いは感じられません。