情報開示されないメルペイ
19年6月期連結決算の売上高は前期比45%増の516億円、最終損益は137億円の赤字(18年同期は70億円の赤字)となった。13年の創業以来、7期連続の赤字である。8月8日開かれた決算説明会は、フリマアプリ「メルカリ」の利益のほとんどを注ぎ込んで立ち上げたメルペイについて、山田CEOが何を語るかに関心が集まった。ところが、メルペイに関して開示されたデータは、2月のサービス開始から4カ月間で登録者が200万人を超えたということだけ。1カ月に延べ1350万人が利用するメルカリを引き合いに「200万人は通過点」(小泉COO)とアピールしたものの、決済サービス、メルペイの利用者数や取扱金額は明らかにしなかった。
スマホ決済市場は、消費増税によるポイント還元が始まった10月にシェア争いの最初の山場を迎えた。そこに向けて各社は大々的なキャンペーンを繰り広げてきた。メルカリがメルペイに関して、情報をまったく開示しなかったことに、出席したアナリストたちの間に失望が広がった。なぜなら、7月24日に19年1~6月期決算を発表したLINEは、スマホ決済「LINEペイ」の詳細を開示していたからだ。LINEはLINEペイのキャンペーン費用が重荷となり、連結最終損益が266億円の赤字だったが、LINEペイの国内利用者数について初めて「月間490万人」と開示。継続利用率は8割を超えたと明らかにした。「先行投資は4~6月期がピーク」(出澤剛社長)との説明も買い材料になり、株価は翌日から2日間で15%上昇した。
一方、メルカリは赤字続きの米国事業の先行きもはっきりしない。20年6月までに月間流通総額1億ドル(約106億円)にする計画で、「達成できれば収益化のメドが立つ」としているが、具体的な数字は非開示だ。米国撤退を予想するアナリストもいる。失望売りが広がり、8月8日から2日間でメルカリの株価は22%下落した。
創業者の山田氏が社長に復帰し、成長に挑むと宣言したが、株価上昇の起爆剤にならなかった。10月18日の株価の終値は2312円。公開価格割れに沈んだままだ。時価総額は3553億円。上場初日につけた8119億円と比較すると4割強の水準だ。
地域密着型のJ1鹿島アントラーズを運営
メルカリにとって唯一のグッドニュースは、サッカーJ1の鹿島アントラーズの買収である。鹿島は旧新日本製鉄と統合した旧住友金属工業のサッカー部が母体。今年4月、新日鉄住金は日本製鉄に社名を変更し住金が消えた。このタイミングで鹿島アントラーズを売却したことになる。旧住金の鹿島製鉄所(茨城県鹿嶋市)と地域一体のチームとして運営してきた時代は終わった。