鹿島の運営会社は日鉄が59%出資していたが、メルカリに大半を譲渡した。8月30日、メルカリは経営権を取得。取得額は約16億円だ。鹿島はJリーグに1993年の発足時から参加し、国内三大タイトル戦で最多19回の優勝回数を誇る強豪。メルカリの小泉社長(当時)は買収会見で、「フリマアプリは20代から30代女性の利用が多い。(鹿島買収は)男性にアプローチする上では大きい」と指摘。アントラーズファンのメルカリ利用に期待を寄せた。
サッカーの運営は地域密着が基本だ。メルカリは日鉄同様「鹿島を活動拠点とするチーム」であることを条件に運営の切符を手に入れた。しかし、メルカリはフリマアプリで広く知られる消費者に近いネット企業。地域一体の運営ができるという保証はない。全国の不特定多数の消費者を対象にするネット企業に、地域に密着するノウハウはあるのか。「鹿島アントラーズの運営がうまくいかなくなったら、すぐに転売するのでは」(関係筋)という声も聞こえてくる。
鹿島アントラーズの明日を予言するような“事件”が起きた。サッカーJ2のFC町田ゼルビアのサポーターミーティングが10月11日夜、開かれた。チームのオーナーになったサイバーエージェントの藤田晋社長が「早ければ来季にチーム名を『FC町田トウキョウ』と改称する」と語った。
藤田社長は「サイバーエージェントは上場企業。大きな投資をする場合、(株主らに)合理的証明が必要だが、成長ストーリーを描くことで納得してもらえる」とし、「マーケット拡大と選手育成は急務。(人口43万人の)町田だけでやるのは難しい」と述べた。チーム名に首都の名前を入れ「町田を拠点に東京全域でマーケティングを展開し、東京ブランドを生かす」と強調した。優秀な外国人選手やスポンサー獲得にも有利になる、と利点について述べた。チームロゴやキャラクターの変更も伝えた。現在のキャラクター「ゼルビー」はスタジアムマスコットとして活用するという。
ミーティングでは「サポーターの声を聞いてほしい」「(藤田社長の提案は)ダサイ」「名前とエンブレムを拠り所に応援してきた」などの異論が噴出。藤田氏は「決定を保留する」としたが、「もうすべてが決まっていて、セールス活動も動きだしている」(関係者)という情報もある。鹿島アントラーズで同じことが起こる可能性もある。
7~9月期決算は最終71億円の赤字
11月7日、メルカリは2019年7~9月期の連結決算を発表した。最終損益は71億円の赤字(前年同期は28億円の赤字)。スマホ決済の「メルペイ」の新規利用者獲得のためのキャンペーン費用がかさんだ。売上高は前年同期比38%増の145億円。国内のフリマアプリの流通総額は同28%増の1268億円。伸び率は19年6月期(通期)の41%から鈍化した。営業損益は70億円の赤字(同25億円の赤字)。
20年6月期の連結業績予想は、今回も公表していない。第1四半期決算の赤字幅拡大を受けて11月8日、メルカリの株価は一時、2035円(500円安)のストップ安となった。将来的な成長イメージに不透明感が増している。
(文=編集部)