コメダ、スタバを「超える」驚異的成長!過酷な秘密の特訓、社長自ら店員として労働
「国内では資材調達も人件費も高騰しているので、無理な拡大はしません。コメダ珈琲店は『くつろぐ、いちばんいいところ』を理念に掲げています。今後も自社でつくるコーヒーとパン、間仕切りのある座席、フルサービスの接客といったコメダらしさを追求していきます。サービス品質が伴わずに“コメダもどき”の店を出しても仕方がない」
このように語る臼井社長の経歴はユニークだ。空軍パイロットに憧れて防衛大学に進学したが、病気で中退して一橋大学に進路を変え、卒業後は三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)で入行総代も務めた。その後ゲームメーカーのセガ(現セガゲームス)に転職し、ベンチャーキャピタル、ナイキ、マクドナルドのCOO(最高執行責任者)を歴任し、セガに戻って社長に就任。さらにグルーポン東アジア統括副社長を経てコメダに転じた。
経歴が示すように、官僚タイプというより現場主義だ。マクドナルドでもコメダでも入社前は立場を隠して、各店舗でアルバイトとして働いた。今でも毎週木曜日の朝6時から9時までは、コメダ本社社屋の1階にあるコメダ珈琲店葵店で自らコーヒーを淹れて来店客に提供している。
同社の商品開発についても触れておこう。フードメニューの名物は77年から販売している「シロノワール」というデニッシュパンにソフトクリームを載せた商品で、14年から派生商品も出すようになった。今年10月1日からは「Ringoノワール」が登場し、12月1日からは「チョコノワール」が昨年に続いて復活した。
「新たなシロノワールを開発する際は、社内でも反対意見がありましたが、実際にスタートするとお客様からは好評の声が多く、ホッとしました」(開発部門の社員)
今年3月、臼井氏に取材を依頼した際の面白いエピソードがある。週末に同氏が取材に応じる場所として自宅近くのFC店を予約しようとしたところ、「週末は一段と混むので座席の予約はご遠慮ください」と丁重に断られたという。結局、別の直営店で取材したが「社長よりも客が大事」なのは、お客様第一の姿勢として健全といえよう。
来年には上場も海外展開も視野に入れている同社だが、さらなる成長のカギは人材力にある。もちろん、人材力とはFC店のオーナーやアルバイトの店舗スタッフも含めての話だ。コメダの接客を評価する声は多いが、結局「ブランドの興廃は自らの中にある」のだ。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)