Uberは革新ではない…なぜiPhoneになれない?破壊的革新者が支配者になる過程
破壊的イノベーションへの誤解
「破壊的イノベーション」という概念は誤解されている――。
最近の「ハーバードビジネスレビュー」(オンライン・英語版)で、「イノベーションのジレンマ」を唱えたハーバードビジネススクールのクレイトン・クリステンセン教授らの論文『破壊的イノベーションとは何か(原題:What Is Disruptive Innovation?)』は、このように述べています。
イノベーションのジレンマというアイデアが最初に発表されたのは1995年でしたので、この概念が産まれてちょうど20年になります。この論文においてクリステンセン教授たちは苛立ちを隠していません。この概念があちこちで使われるようになったものの、もともと提唱された概念と違っていい加減に使われているからです。
クリステンセン教授たちは、どのようなイノベーションでも破壊的イノベーションであるわけではなく、どのような状況に適用できるものでもない、と語っています。ことに近年タクシー業界で話題を呼んだUberは破壊的イノベーションではない、と喝破している点に注意しなければなりません。その理由は後述しますが、あらためて破壊的イノベーションとは何であったかを、クリステンセン教授と彼の理論の日本における紹介者である関西学院大学の玉田俊平太教授の著作から考察してみましょう。
破壊的イノベーションとは、まずもって、限られた資源しか持たない小企業が大企業に挑戦していくプロセスのことです。負け知らずの大企業は、自社の最も手強い顧客相手に彼らのニーズを満たそうとして製品やサービスを提供します。こうした顧客は、自社にとって最も収益率の高い顧客でもあります。
すると、こうした市場を支配する大企業は、顧客セグメントの要求に過剰にこたえて、他のセグメントの要求を無視するようになります。これは通常の企業が自社の大事な顧客に奉仕するわけですから、なんら非難されるようなことではありません。しかし、このようなとき、破壊的イノベーターは、無視された顧客セグメントに対して、より優れた機能の商品を提供します。それも往々にして、より安い価格で提供するのです。
こうして破壊的イノベーターは、大企業によって無視された顧客セグメントにおいて橋頭堡を築きます。そして破壊的イノベーターは次に、大企業にとって大切な中核の顧客層に対して進撃を開始し、それらの顧客層が破壊的イノベーターの製品を採用し始めます。
破壊的イノベーションは、こうして実現することになります。