ビジネスジャーナル > 企業ニュース > Uberは革新性ゼロ?  > 4ページ目
NEW
田中洋「マーケティングのキーインサイト」

Uberは革新ではない…なぜiPhoneになれない?破壊的革新者が支配者になる過程

文=田中洋/中央大学ビジネススクール教授

 しかしブランドの誕生は、破壊的イノベーションだけがその起源ではありません。たとえば、GMの場合、破壊的イノベーションというよりは、大量生産を可能にした垂直的統合ビジネスモデルによって誕生しています。またディズニーブランドも、破壊的イノベーションというよりは、ウォルト・ディズニーがアニメーション映画とテーマパークとを結びつける事業構想によって誕生したブランドです。

 従って、すべてのブランドが破壊的イノベーションによって産まれたというよりは、むしろそうしたブランドは少数であるというべきでしょう。

 ただし、注意すべきことは、破壊的イノベーションによって産まれたブランドは、iPhoneに見られるように、既存ブランドよりも強力に働く可能性が大きいのです。なぜならば、こうした破壊的イノベーションはまず「無消費者」と呼ばれる既存の消費セグメントではない、新しいセグメントによって支持されます。徐々に従来市場の核となってきたセグメントによって採用されていくのです。こうして市場のなかで時間をかけて納得性をもって形成されていったブランドは、消費者によって理解され、強い愛着をもって維持されるでしょう。

 また、破壊的イノベーションが浸透した後、そのブランドは市場で支配的位置を占め、次の破壊的イノベーションによって取って代わられるまで存続します。こうした持続的イノベーションの時期、強力なブランドがそれを支えているといえるでしょう。

主流派ブランドが取り得る選択肢

 ここまで考察してきたことをまとめてみましょう。ブランドは破壊的イノベーションの普及過程で消費者が自分で理解し、納得して自分の意思で買うブランドとして存在します。一方で、持続的イノベーションの時期には、ブランドはこうした持続的イノベーションを可能にする土台として機能するのです。

 マネジメントの観点からいえば、破壊的イノベーションの時期には、たとえばアップルがそうであったように、チャレンジャーとしてのイメージ、あるいは革新者としてのイメージが有利に働くと考えられます。逆に、持続的イノベーションのステージには、本物イメージ、あるいは信頼イメージがより重要となるでしょう。

 一番の問題は、持続的イノベーションを続けてきた主流派ブランドが、破壊的イノベーターによってチャレンジを受けたときです。このときの主流派ブランドが取り得る選択肢はふたつあります。

田中洋/中央大学ビジネススクール教授

田中洋/中央大学ビジネススクール教授

京都大学博士(経済学)
日本マーケティング学会会長、日本消費者行動研究学会会長を歴任。
1975~1996 21年間、㈱電通勤務。
1996~1998 城西大学経済学部助教授
1998~2008 法政大学経営学部教授
2003・4年度コロンビア大学ビジネススクール客員研究員
2008~2022 中央大学ビジネススクール教授
2022~ 中央大学名誉教授
元・東証一部上場・ソウルドアウト株式会社社外取締役
関心領域:マーケティング論・ブランド論・広告論
田中洋 中央大学ビジネススクール教授のオフィシャルサイト

Uberは革新ではない…なぜiPhoneになれない?破壊的革新者が支配者になる過程のページです。ビジネスジャーナルは、企業、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!