実は収益基盤が「とても心許ない」東芝、本当の危機…改革という名の単なる「縮小」
その半導体事業にも不採算事業はあり、ソニーに売却されるのは赤字のシステムLSI事業の画像用半導体事業であり、もうひとつの赤字事業であるディスクリート(単機能半導体)事業では白色LED事業からの撤退が決定されている。
これらの対処は、赤字事業の止血による縮小均衡にしか見えない。苦境にある企業が立て直しを行う方法として、米国では「Shrink to Grow(成長する為に一度縮小する)」という表現があるように、不採算のみならず事業整理という施策が必ずしも悪いわけではない。もし、東芝が「Shrink(事業縮小)」を通して脂肪を削いで組織体質を筋肉質にすることができ、組織体質を抜本的に刷新することができるとすれば、現在進行する事業整理を東芝建て直しのための「Shrink to Grow」、すなわち抜本改革の一環ととらえられるであろう。
組織体質の転換
では、東芝でどのような組織体質の転換が行われているかを見てみたい。
もたついたものの、過去に遡った決算訂正を含む有価証券報告書の提出、室町正志会長の新社長就任などで、表面的には出直しの体制を整えてみたものの、組織体質転換にとって大前提である、今回の不正会計事件の清算ができない状況が続いている。第三者委員会の調査に対する批判を受けてか、9月には社外の弁護士3人からなる役員責任調査委員会を立ち上げ、11月初旬にその報告書を公開。期を一にして、東芝として歴代3社長等を提訴した。
これは、内実は株主代表訴訟を回避するための苦肉の策であったのであろうが、「旧経営陣との決別」というメッセージでもあり、市場の信頼を取り戻そうとしたと受け取ることはできる。しかし、下旬には、米子会社ウエスチングハウス(WH)の減損をめぐる適時開示義務違反が発覚して、情報の隠蔽体質は変わっていないことが露呈し、再び市場の信頼を損ねている。
そして、今月7日に証券取引等監視委員会が、有価証券報告書の虚偽記載では最高額に当たる73.7億円の課徴金納付命令を東芝に出すよう金融庁に勧告し、これで今回の事件の始末は付いたと思いきや、同委員会が東京地検と歴代3社長を刑事告発する協議に入ったと報じられている。周囲が過去との決別を後押しすればするほど、それがいかに難しいかを逆に示すことになっている。