武田の医療用医薬品の国内売上高に占める特許切れの薬の比率は45%。その大半を切り離すとなると、大幅な減収は避けられなくなる。14年度に576億円を販売した前立腺がんの薬リュープリンや糖尿病薬アクトスなどは新会社に販売を移管しない方向だ。減収の幅をどこで食い止めるかが、今後の経営上の焦点となる。
この点に関して武田は15年12月28日、「減収の影響は17年3月期で500億円程度になる」と見通しを発表した。特許切れ薬の販売が急減していることや武田に入る販売手数料などを考慮すると、減収のダメージは軽減されるとしている。
業界勢力図への影響
武田とテバの提携は日本の後発薬品メーカーの地図を塗り変えることになるだろう。製薬会社のグローバルランキング(14年)によるとテバは12位。武田は17位。テバは世界最大の後発薬企業なのだ。
テバは08年9月に興和と合弁会社、興和テバを設立し、日本の後発薬市場に参入した。11年5月、後発薬メーカー第3位の大洋薬品工業の発行済み株式の57%を370億円で取得。最終的に100%の株式を取得して完全子会社にした。総額で1000億円を超える大型のM&Aとなった。
同年9月に興和との合弁事業を解消し、興和テバを完全子会社にした。12年4月に大洋薬品と興和テバが統合し、テバ製薬が発足した。テバ製薬の売上高は700億円規模。
国内の上場している後発医薬品メーカーは日医工(15年3月期売上高:1270億円)、沢井製薬(同1054億円)、東和薬品(同714億円)が上位3社。テバ製薬の売上高は非公開だが、武田とテバの合弁新会社に参加することで大幅にアップすることになる。一気に、国内に売上高1000億円を目指すと宣言していた。社名は武田テバファーマに変わることをテコに、さらに売り上げを伸ばす。
後発薬メーカーのトップに浮上するものと見られている。武田は名を捨てて実を取る。特許切れ薬事業を分離することの衝撃は、予想以上に大きいのだ。
ウェバー改革の第2弾は、非重点分野の呼吸器薬事業の切り離しだ。武田は15年12月16日、海外展開している呼吸器事業を英製薬大手、アストラゼネカに売却すると発表した。売却額は5億7500万ドル(約700億円)。16年3月末までに売却を完了する。
売却の対象はぜんそく薬ダクサスとアルベスコ、アレルギー用点鼻薬オムナリスの治療薬3品。臨床試験にまで至っていない初期段階の新薬候補7品も譲る。治療薬3品と新薬候補のほとんどは、11年に買収したスイスの製薬大手、ナイコメッドが手がけていたものだ。3品の売上高は15年3月期の実績でおよそ240億円である。武田は、がんや消化器領域を重点分野に定め、経営資源を集中する方針だ。もともと呼吸器薬に力を入れていなかったこともあり手放すことにした。