テレビとパソコンの開発拠点である東京都青梅市の青梅事業所は閉鎖、売却する。家電部門全体で6800人の人員を削減。半導体部門では白色LED事業からの撤退などで2800人を削減。本社の管理部門では全体の1割にあたる1000人を減らす。
こうした1万人規模のリストラ関連費用を盛り込むことで、16年3月期の最終損益は5500億円の赤字になる。世界的な金融危機に発展したリーマン・ショック直後の09年3月期の3988億円の赤字を上回り、赤字額は過去最大に膨らむ。
優良資産も売却
1万人の人員削減や家電など不採算事業からの撤退で東芝は再生できるか。市場の反応は冷ややかだ。財務体質があまりにも悪化しているからだ。16年3月期連結決算の巨額赤字で自己資本は4300億円と15年3月期比で6割減少する。財務の健全性を示す自己資本比率も8%前後と、15年3月期末の17%の半分に急落。経営再建中のシャープ並みの危険水域に突入する。
リストラ原資の確保と財務改善のために、医療機器子会社、東芝メディカルシステムズ(非上場)の株式を51%以上売却する。80%売るという案もある。東芝メディカルはコンピューター断層撮影装置(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)、超音波診断装置など医療用の画像診断機器を手掛け、国内シェアは首位。世界でも4位で12%のシェアを持つ。15年3月期の売上高は4056億円。企業価値は5000億円規模に達するとみられている。
この優良資産を手放さざるを得ないほど、東芝は深刻な状況に陥っているわけだ。買い手には、ライバルだった日立製作所やキヤノン、ソニー、富士フイルムホールディングス、米ゼネラル・エレクトリック(GE)傘下の英GEヘルスケア、韓国サムスングループなどの名前が挙がる。
今後は米原発子会社、ウエスチングハウス(WH)を中心とする原子力などのエネルギー事業と、スマートフォン(スマホ)用フラッシュメモリなどの半導体事業に経営資源を集中する。フラッシュメモリは、繰り返しデータの書き込みができ、電源を切ってもデータが消えないことから、スマホやデジタルカメラなど身近な商品から航空機のボイスレコーダーまでさまざまな分野で活用されている。
三重県四日市の半導体工場に、米サンディスクと共同で5000億円規模の投資を行い新棟を建てるとの報道もある。17年に稼働し、NAND型フラッシュメモリの最新型を増産する。東芝は現在、「特設注意市場銘柄」に指定されており、増資や社債発行による資金調達は難しい。新棟の建設費は金融機関からの借り入れに頼らざるを得ない。