ただ、今後も半導体事業は巨額の投資が必要なため、同事業を分社化して株式を公開することも検討している。
東芝の経営においてリスクが高いとみられているのが、WHだ。これまでWHに関する数字を公表してこなかったため、「東芝のブラックホール」(市場筋)といわれてきた。WHを買収した際ののれんが3000億円以上ある。減損テストの結果によっては、巨額損失の計上を余儀なくされるかもしれない。V字回復に向けた最初のハードルが、WHの減損テストだ。
ガバナンスの問題
東芝のガバナンス(企業統治)は、いまだに長老が支配している。室町氏を社長に登用したのは、相談役で日本郵政社長の西室泰三氏だった。西室氏は日本郵政の定例会見で、「本人(室町)は辞めると言っていたが、私が絶対に辞めないでくれと頼んだ。ひとりはリーダーシップを取る人が必要なので残ってもらった」という内幕を語った。自分が東芝のキングメーカーであることを、問わず語りで明らかにしたわけだ。
三菱ケミカルホールディングス会長(経済同友会代表幹事)の小林喜光氏、アサヒグループホールディングス相談役の池田弘一氏、資生堂相談役の前田新造氏は西室氏の財界人脈だ。「直接、口説いて社外取締役に就任してもらった」と西室氏本人が語っている。前田氏は東芝取締役会議長を務める。一相談役にすぎない西室氏が、社内でいまだに大きな影響力を持っている。
現在、社外取締役を中心に相談役制度や顧問制度の廃止を検討している。相談役には80歳未満の社長や会長の経験者が就く。1996~2000年に社長を務めた西室氏と、00~05年まで社長だった岡村正氏が現在、相談役になっている。西室氏は、昨年末の日本郵政の記者会見で「私の相談役の任期は(16年)6月までだが、そこまで続けることにはならない」と早期退任の意向を表明した。この発言に社外取締役は、「相談役制度の廃止を決めるのは我々だ」と強く反発している。
これまで東芝は、OBの影響力が強く派閥抗争が不正決算の背景にあると指摘されてきた。屋上屋を架する相談役の廃止で、新生・東芝をアピールする狙いがあるのだろう。
新しい出発の決意を示すためには、新たな体制にすることが不可欠だ。果たして「西室町体制」の延長線上に、新生・東芝はあるのか。
(文=編集部)