ジャパネットたかた、驚異の経営…巧妙かつ緻密な「儲ける仕組み」、和気あいあい感の秘密
また、管理部門はもちろんのこと、スタジオやコールセンターを擁する本社が長崎県佐世保市という地方に所在していることも、東京などの大都会とは異なり、どこかほんわかとした雰囲気をつくっているのかもしれません。ずいぶん昔のことですが、筆者は学生と共に本社を訪問させていただきました。大きな本社ビルは土足厳禁で、スリッパに履き替えたことを今でも鮮明に記憶しています。スリッパに履き替えての業務は、多くの人が憧れるのではないでしょうか。想像するだけでも心地よい感覚になりますね。些細なことかもしれませんが、こうしたこともテレビショッピングにおける、温かさの創出に影響を与えていることでしょう。
システマティックな商品の絞り込み
テレビ広告には大きなコストを伴いますが、かなりの時間をかけてひとつの商品を紹介する場合も多く見受けられます。したがって売り上げ不調で大赤字になる場合も多く、リスクの高いビジネス・モデルだと筆者は捉えていました。ところが、こうしたリスクを最小化させるシステムがジャパネットでは構築されていたのです。
ジャパネットといえばテレビショッピングのイメージが強いですが、新聞折り込み広告(ビラ)、ラジオ、BSテレビ、インターネットなどを通じても販売が行われています。新聞折り込み広告の場合、低コストで多くの商品を紹介することができます。以下、ラジオ、BSテレビ、通常のテレビと、消費者への影響力は高くなるものの、コストが嵩んでいきます。そこで、まず新聞折り込み広告で売り上げの良かった商品をラジオに、さらにラジオで反応の良かった商品をBSに、という具合に商品の絞り込みが行われています。その結果として、テレビでは売れる可能性の極めて高い商品が紹介されるというシステムが構築されているのです。
もちろん、商売に対してシビアな面も抜かりはありません。ジャパネットでは、さまざまなモノが主たる商品にセットされて販売されています。これらを単純に「おまけ」と捉え、喜ぶ消費者も少なくはないでしょう。また、しっかり者の消費者に対しても、「おまけ」が他の小売業者との価格比較を複雑化させ、ひいては価格比較を放棄させることに大きな効果を発揮していることでしょう。
こうしたジャパネットの稼ぐ仕組みを考慮すると、高田明元社長のテレビ出演がなくとも、堅調な業績は今後も続いていくでしょう。
ちなみに、テレビショッピングへの最後のレギュラー出演となった1月15日の会見で、高田明元社長は従業員に対して「客を感じる心を持ってほしい。そのためには人間力を磨いて」とエールを送っていますが、消費者志向とはまさにこういうことであり、それを愚直に貫いてきた結果、今のジャパネットがあると強く感じた次第です。
(文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授)