三井住友銀行系では、住友化学傘下の抗精神病薬の大日本住友製薬と塩野義製薬に再編の可能性がある。塩野義は高脂血症薬という切り札を持っており魅力的。手代木功(てしろぎ・いさお)社長のもと、過去4年間で株価は6倍になった。塩野義を中心に三井住友銀行系は回ることになるかもしれない。
みずほ銀行がメインの企業のなかでは、カテーテルなど心臓血管領域に強みをもつテルモが医薬品メーカーの買収に高い関心を示している。糖尿病薬のキッセイ薬品工業や気管支ぜんそく薬のキョーリン製薬ホールディングスの主力銀行も、みずほである。胃腸薬のわかもと製薬の筆頭株主はキッセイ薬品だ。
大塚ホールディングスは主力の抗精神病薬が米国で特許切れ。M&Aに動く可能性が高い。地銀の阿波銀行とりそな銀行がメインだ。認知症薬、抗潰瘍薬を世界展開しているエーザイは独立路線を堅持できるかどうかが焦点。16年3月期の売上高は5500億円の見込みだが、1兆円企業にならないと苦しい。メインは埼玉りそな銀行だ。
エーザイは得意としてきた消化器系分野を、より効率的な研究開発体制を整えるため分社化し、味の素の製薬子会社と統合する。化粧品の原料や検査薬の事業売却も決めた。認知症とがんの新薬開発に経営資源を集中する。
勢力地図が大きく変化の可能性も
M&Aを仕掛ける側のメインプレーヤーになる可能性が高いのは、富士フイルムホールディングスだ。18年度にも血液がんの抗がん剤を発売する。米国で臨床試験から治験に進むことを決めたほか、日本では治験を実施中だ。がん分野で同社初の薬となる。「医薬品事業を成長の牽引役にする」と古森重隆会長兼CEO(最高経営責任者)は明言している。東レも注目される。関節機能改善薬の科研製薬の大株主(4.7%を出資)だ。
製薬業界の最大の関心事は、国内最大手である武田薬品工業。世界トップ10入りを目指していたが、海外M&Aがうまくいかず収益が悪化し17位(14年)まで後退した。国内2位のアステラス製薬は前立腺がんの薬などが伸びており、連続最高益を続けている。武田と好対照だ。武田は筆頭株主(7.2%を出資)の、婦人科系、泌尿器系に強いあすか製薬(旧・帝国臓器製薬)を吸収合併するだけでは足りない。
政府が製薬再編の旗を本気で振るとすれば、財務大臣名義で33.3%を出資しているJT(日本たばこ産業)を巻き込むことになるかもしれない。もしJT・武田連合になれば、世界のメガファーマと戦う体制が整うが、可能性は低いとされる。