本連載前回記事で、Finance(金融)とTechnology(技術)を融合させた造語「フィンテック」が今後、金融を激変させる可能性を説明した。今回はさらにお金の概念そのものを変えてしまったビットコインとその基盤技術であるブロックチェーンについて、わかりやすく説明したい。
ビットコインは「仮想通貨」「暗号通貨」とも呼ばれるが、正確には「通貨のような役割をもつコードによる通貨のようなもの」と呼ぶべきかもしれない。それらの基礎となる技術が、ブロックチェーンという帳簿の連鎖のようなものだ。
従来の通貨とは各国の中央銀行が発行するもので、その発行量などは中央集権的なコントロールが行われている。そして人々は通貨への信頼を置くことで転々流通していくものだ。
しかし、ビットコインはそれとはまったく異なるものだ。
そもそも、Aさんが甲銀行の自分の口座から乙銀行のBさんの口座に100万円送金するとは、どういうことだろうか。実際に甲銀行が乙銀行に現金を配達するわけではなく、甲銀行の帳簿では「Aさんの口座から100万円引かれた」と記載する一方で、乙銀行では「Bさんの口座に100万円入金された」と記載される。Aさんの口座からは手数料が引かれる。そして甲銀行と乙銀行のやり取りは、両行間のほかの取引総額ベースで差額を、日銀にある両行の口座間で差額決済される。
つまり、実際に資金移動があるかどうかではなく、甲銀行と乙銀行での記録こそが、送金されたことの証拠となるといえる。たとえば行員が「1000万円送金」と記帳データを改ざんすれば、外見上はそうなってしまうのだ。もちろん行内のチェックが厳しいので、そうした不正を簡単にすることはできない。そして、実際に銀行で不正が起きても、ほとんどのケースでは外部に知られない。なぜなら、銀行とは信用が第一の事業だからだ。
お金=データ
以上より、お金というのは実は「データ」なのではないかと考えることができる。そして、「信頼性を保持するためには衆人の監視下に置けばよいのではないか」と考える人がいた。それがサトシ・ナカモトと名乗る人物であり、同氏の『Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System』と題された論文に基づき09年に運用が開始されたのが、ビットコインだ。
コインと名付けられているが、厳密には通貨ではなく通貨と同様の機能をもったコンピューター上の「コード(Code)」といえる。機能としては、通貨同様に決済や送金などに使うことができる。