リスクと課題
ただし、リスクもある。記憶に新しいが、当時世界最大級の取引所であった日本のマウントゴックスが14年2月、数百億円相当のビットコインが消失したと発表し破産した事件だ。真相は解明されていないものの、取引所経営者による横領という見方があり社長は逮捕された。この段階ではビットコインの仕組みそのものの安全性が棄損されたわけではなかったが、取引所における人為的な不正の可能性が明らかになった。
また、理論上は監視を行う51%(過半数)が悪意で不正取引を「適正」としてしまえば、不正も可能だ。もっとも、現実には単一の攻撃者がネットワーク全体の過半数の計算能力を保持するのは困難だと考えられていた。ビットコインはこうした多数による監視(プルーフ・オブ・ワーク)によって、その信頼性を担保していることになっていた。
しかし年が明けた今月、それが現実のものとなっていると、ビットコイン開発のコアメンバーが自身のブログで明らかにした。今月、ビットコインの開発コアメンバーだったマイク・ハーン氏が離脱した。
同氏は、自身のブログで、「マウントゴックスの不正とは次元が異なる、ブロックチェーン仕組みそのものの信頼性の破綻が起きた。ビットコインは10人以下に支配され、運営コミュニティとして破綻している。中国政府のファイヤーウォールによる遮断も一因。取引の1秒当たりの処理速度が限界になり、そのため処理されないバックログ(未処理取引)が大量に発生したことで手数料が大幅に引き上げられてしまい、クレジットカード以上に高くなってしまっている。しかし、まだ完全に破たんしたわけではない」という趣旨のコメントをし、今後どのような展開になるのか、全く読めない状況だという。
ブロックチェーンなどのビットコインの仕組みは、暗号通貨だけではなくほかにも応用できる考え方として広まりつつあり、「ビットコイン2.0」「ブロックチェーン2.0」などと呼ばれている。たとえば、契約書の自動化、個人や団体が自由に通貨発行できる仕組み、所有権のデジタル化、取引所の分散化などがある。しかし、常にそのリスクを認識する必要がありそうだ。実際儲け話として、ビットコインを騙る詐欺的な行為が頻発している。