通常の通貨は、中央銀行が管理している。たとえば円であれば日本銀行だ。一方、ビットコインには中央銀行のようなものは存在しない。あらゆる取引は、すべて誰でもが参加できるインターネット上の個人間やり取り(ピアツーピア・ネットワーク)で行われる。
そしてビットコインの信用は、ネットワーク参加者全体で相互監視されることで形成されている。あらゆる取引は、ブロックチェーンと呼ばれる元帳のようなものに、ネットワーク上の参加者(=ノード)に分散して記録される。過去のすべての取引が記録されるため、誰でも過去の取引を確認・検証することができる。データが分散しているために、仮に1人がネット上で攻撃を受けてデータを喪失しても安全だとされている。
決済手段として広がるビットコイン
ビットコインの通貨単位はビットコイン(BTC)だが、最小単位は1億分の1BTCで、その単位は発案者にちなんでSatoshiと呼ばれる。ビットコインの受け渡しはウォレット(財布)ソフトウェアを使って行う。
たとえばAさんがBさんに1BTCを送金する場合を考えてみよう。まずAさんは銀行の口座番号にあたるビットコインアドレスを取得する。これは乱数であり公開鍵になっており、誰でもが見ることができる文字列だ。さらに秘密鍵を取得する。これは絶対に他人には見せてはならない文字列だ。
そのうえでBさんのアドレス宛に1BTCを送金する、という内容を公開鍵とともにマイナー(採掘者)と呼ばれるノードに送信する。マイナーは受け取った取引情報をブロックにまとめて、ブロックチェーンの末尾に記録する。ただし、新しいブロックを記録するためには10分ほどで解けるように調整される難問(計算量の大きい問題)を解く必要がある。マイナーたちはその問題を解き、最初にブロックを追加することに成功したマイナーだけが規定された報酬を得ることができる仕組みになっている。
なお、最終的に発行されるビットコインの総量は約2千万BTCに決定されており、ビットコイン生成に対して得られる報酬額は4年おきに半減する。このため単位(BTC)当たりのビットコインの価値が急騰したり、予想するマイナーによる採掘競争が過熱することもある。
ビットコインの送金手数料は銀行の送金手数料やクレジットカードの手数料より安価であること、365日24時間利用可能であること、個人情報、口座番号、カード番号などの入力も必要ないこと、カントリーリスクがないことなど大きなメリットがある。そのため、送金やECサイトの決済手段として広がりつつある。特に海外送金の制限がある国や通貨の信用度が低い国などでは、通貨の代替手段としても注目されている。