今や日本の国民食ともいえるラーメン。中華料理店や専門店でしか食べられなかった時代と違い、現在は居酒屋チェーンを筆頭にカラオケ店などもメニューに採り入れている。
なかでも、回転寿司チェーンのくら寿司やスシローのラーメンは「レベルが高い」とラーメン好きの間でも人気を集めている。しかし、本来はラーメンと無関係な業種までラーメンを提供しているのは、なぜなのだろうか。
「ひとつの大きな理由としては、『ラーメン専門店以外の飲食店にも、スープ業者がスープを売る』というビジネスモデルが定着したことが挙げられるでしょう。その結果、特に修業経験がなくても、それなりにおいしいラーメンをつくることができる環境が整ったのです」
こう語るのは、フードジャーナリストでラーメン評論家の山路力也氏だ。これまで、フランチャイズで複数店舗を経営するラーメン店は、セントラルキッチンでラーメンの「肝」となるスープをつくり、それを各店舗に売る(卸す)ことで味の統一を図ってきた。近年は、こうした展開が専門店以外の外食チェーンに向けても行われるようになったわけだ。
「つまり、スープ業者が不特定多数の店舗に市場を広げたことで、専門店レベルのスープが小分けされるようになったのです。逆にいえば、これまでは自社のフランチャイズ店舗のためにスープづくりを行っても、他社のためにスープをつくるような会社はありませんでした。それに、今は麺の冷凍技術も上がっているため、ブラインドテストをすれば生麺と違いがわからないぐらいおいしくなっています」(山路氏)
また、ある程度本格的なラーメンを提供するとなれば、寸胴鍋や相応の火力を備えた厨房などの設備が必要となる。一番の障壁は、豚や鶏ガラなどの生ごみが多く出てしまうことだ。しかし、スープ業者からスープや麺をまとめて仕入れれば、そういったごみも一切出ない。極論をいえば、レトルト食品のカレーを温めるような感覚で、本格的なラーメンが提供できるというわけだ。
こうした環境の変化によって、外食チェーンがラーメンをメニューに採り入れる流れが生まれた。
「流行のきっかけといえるかどうかはわかりませんが、カラオケ店で最初に本格的なラーメンを提供したのは、パセラ・リゾーツです。2010年代に入ってからお茶の水店の店長が『パ郎』という二郎インスパイア系のラーメンを始めたことで、『異業種が本格的なラーメンを出してもいいんだ』という空気が醸成されたように感じます」(同)