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株式相場、年始から急落で大荒れ、今年の低迷を暗示…即刻“予想外れた”アナリストたち

文=有森隆/ジャーナリスト
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「Getty Images」より

 2020年の東京株式市場の大発会(1月6日)は、前年に続いて波乱の幕開けとなった。米国のトランプ大統領がイラクの首都バクダッドへの空爆を指示。現地を訪れていたイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官が爆死したことを受け、中東情勢が一気に緊迫した。

 日経平均株価は一時、前年末比508円安に急落した。19年の大発会も452円安(一時、773円安)だった。値幅が高安(上下)いずれかで400円超となるのは2016年から5年連続である。地政学リスクが高まるなか、1月3日のNYダウも下げ、為替は1ドル=107円台まで円高が進んだ。国際原油相場も上昇した。ニューヨークの金先物は6年9カ月ぶりの高値をつけ続伸中。

 6日の東証1部の値下がり銘柄数は全体の85%を占めた。日米とも米・イランの武力衝突は株価に織り込んでいない。戦争を回避できなければ、株価の一段安は避けられそうにない。バブル崩壊の年となった1990年や、リーマン・ショックの2008年などは、大発会急落が年間の下げを暗示した。

 1月7日は前日比370円高の2万3577円と反発したが、8日は大きく下げ、7日に戻った分が帳消しとなり、さらに下値を模索する動きとなった。8日の安値は2万2951円である。

予想はしょせん予想

 年始恒例の新聞各紙の2020年相場アンケートのなかで、「日経ヴェリタス」(日本経済新聞社/1月5日号)だけは反面教師として参考になる。日経平均株価の安値をチェックしてみた。

 菊池真・ミョウジョウ・アセット・マネジメント代表取締役は弱気筋の筆頭だが、高値2万4500円(1月)、安値1万4000円(12月)。これが的中すると、証券会社が数社潰れる。安値1万7000円(月は明示せず)は草刈貴弘・さわかみ投信取締役最高投資責任者。草刈氏の予想は当たる。高値は2万6000円(同)。安値が2万円大台割れとしたのは、上野泰也・みずほ証券金融市場調査部チーフマーケットエコノミストの安値1万9500円(12月)、高値は2万4500円(8月)である。

 伊藤篤・新生銀行金融調査室長は安値1万9000円(5月)、高値2万5000円(12月)。田辺孝則・田辺経済研究所代表取締役は安値1万9500円(12月)、高値は2万4500円(1月)だ。筆者が信頼している藤戸則弘・三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフ投資ストラジストは高値2万4800円(5月)、安値2万円(10月)である。筆者が信頼しているアナリストの多くは、高値2万5000円突破は難しい、と判断しているようだ。

 強気派はこうなる。嶌峰義清・第一生命経済研究所取締役首席アナリストは高値2万8000円(12月)、安値2万3000円(1月)。三宅一弘・レオス・キャピタルワークス運用本部経済調査室長も高値2万8000円(12月)、安値2万2000円(6月)。柳谷俊郎・あおぞら投信取締役会長は高値2万7500円(12月)、安値2万1500円(1月)。広木隆・マネックス証券執行役員チーフ・ストラジストは高値2万7200円(8月)、安値2万3500円(1月)。秋野充成・いちよしアセットマネジメント上席執行役員は高値2万7000円(10月)、安値2万2000円(2月)。大谷正之・証券ジャパン調査情報部長は高値2万7000円(12月)、安値2万1500円(1月)。ほかにも高値2万7000円は数人いる。

 当たらないことで有名な日本経済新聞、1月1日付の経済人株価予想では、高値2万7000円(12月)が最高。大和証券グループ本社の中田誠司社長だ。安値は2万2000円(2月)である。その次は、三菱ケミカルホールディングスの小林喜光会長で高値2万6500円(9月)、安値2万3000円(3月)。高値2万6000円だと、大和ハウス工業の芳井敬一社長が6月と予想。安値は11月で2万1000円とした。日本電産の吉本浩之社長は2万6000円(12月)、2万2000円(6月)とした。退任が確実視されている吉本社長を登場させるのは残酷ではないのか。

 昔は良く当てた信越化学工業会長の金川千尋氏は高値2万6000円(12月)、安値2万1000円(5月)。日本ガイシの大島卓社長が12月に高値2万6000円、安値は2万2500円(1月)。東京海上ホールディングス社長の小宮暁氏は高値2万6000円(11月)、安値は2月で1万9500円。安値2万円割れを予想したのは小宮社長1人。

 該当月は違うが高値2万5000円、安値2万1000円という標準の回答をした経営者は伊藤忠商事・岡藤正広会長、三越伊勢丹ホールディングス・杉江俊彦社長、セコム・中山泰男会長、サントリーホールディングス・新浪剛史社長である。味の素・西井孝明社長は高値2万4000円(10月)、安値2万1000円(2月)だった。

 20人中会長が6人も回答していたのが目を引いた。日頃の日経の社長アンケートでも登場が多い富士フイルムホールディングスの古森重隆会長は「いつもの通り」で驚かないが、日頃の回答は社長名なのに、あえて会長にした企業もある。その思惑はなんなのだろうか。財界のイス獲りなのか。

 1月3日付読売新聞「景気・戦略30人の回答」でも株価を聞いている。同じ回答者なのに2019年は日経と読売で高値・安値が異なる人が複数いた。回答者名は違っていても企業が同じなのに予想の数字が違うケースもあった。広報部の責任者が調整した結果、ミスが起こったとしか思えない。本人はアンケート結果をきちんと確認しないのか。

 小宮暁・東京海上HD社長は違った。日経では安値1万9500円(2月)なのに読売では安値2万円。伊藤忠商事は日経は岡藤会長で、読売は鈴木善久社長。名前は違っても高値2万5000円、安値2万1000円で一致。商社業界随一といわれる“広報力”できちんと対応した。大和証券グループ本社の中田誠司社長、味の素の西井孝明社長、サントリーHDの新浪剛史社長、三越伊勢丹HDの杉江俊彦社長は完全に一致。株価予想でダブった経営陣はこれだけ。東京海上HDはお粗末ではないか。

 日経はパナソニックの津賀一宏社長、三井不動産の菰田正信社長をスルーしていた。読売は三菱商事の垣内威彦社長を落とし、三井物産の安永竜夫社長に回答させていた。リーディングカンパニーのトップを自負する社長・会長が両紙で落とされるとその企業の広報部長の首が飛ぶというジンクスがある。今年はいかに。 読売は経済同友会代表幹事のSOMPOホールディングスの桜田謙吾社長をスルー。経団連会長会社の日立製作所の東原敏昭社長は両紙で回答している。

 今年もトヨタ自動車の豊田章男社長は出てこない。ポリシーがあって回答しないのだろうか。ソニーの吉田憲一郎代表取締役はトヨタを見習ったのだろうか。日経の有望銘柄の1位がソニー、2位がトヨタ自動車なのに両社とも回答していない。両紙とも建設(スーパーゼネコン)、陸運(ヤマトHDなど)から回答を求めていないのはなぜか。日産自動車を除外したのは見識があったからであろう。

初日に予想が外れた“専門家”

 株価の予想などあてにならないとわかっていても、大発会に予想が外れてしまった“専門家”は顔を洗って出直したほうがいい。アンケートの締切りが12月20日前後であるのはわかるが、それを理由にしてはいけない。

「日経ヴェリタス」の予想で今年の安値を2万4000円(1月)とした平野憲一・ケイ・アセット代表(元立花証券)は即アウト。2万3500円(1月)とした広木隆・マネックス証券執行役員も脱落。ご両人は証券界の論客として名前が売れているが、1日で即アウトはいただけない。豊田英男・水戸証券投資情報部部長は安値2万3800円(10月)。10月の安値という予想が、たった1日で没(ボツ)となってしまった。

 前野達志・岡三アセットマネジメントシニアストラテジストは安値2万3500円(1月)。松本聡一郎・クレディ・スイス証券日本最高投資責任者は安値2万4000円(1月)。日本最高投資責任者という肩書が泣いている。松波俊哉・ニッセイアセットマネジメントチーフ・アナリストは安値2万3700円(3月)、圷正嗣・SMBC日興証券チーフ株式ストラテジストは安値2万3500円(1月)だ。以上、7人が初日に競争中止とあいなった。

 安値2万3000円とした人は12人。首の皮一枚でセーフの状態だが1月8日には一時、2万2951円(624円安)まで突っ込んだ。12人もアウトとなった。トランプ大統領がもっと吠えれば、さらに脱落者が増える。73のサムライのうち20人近くが初日段階でレームダックとなり、3日目で競争中止である。こんな予想、誰が信じるものか。JPモルガン・アセット・マネジメントは2人の連名で回答している。2人ともグローバル・マーケット・ストラテジストだそうである。

 2016年は大発会から6日連続安となったが、初日に回答者66人中29人が年間安値予想を割り込み、6日目の1月12日には、“脱落者”が52人に達した。今年は連名の会社があるから67人である。

 日経新聞の株価予想(経済人20人)では、さすがに初日にアウトは出なかったが、安値2万3000円(1月)とした東京エレクトロンの河合利樹社長は3日目で脱落した。三菱ケミカルホールディングスの小林喜光会長は経済同友会の代表幹事の時代から「まるで評論家」(有力財界人)だったが、安値2万3000円(3月)で同じくアウト。読売では、片野坂真哉・ANAHD社長が安値2万4000円で初日でアウト。後藤高志・西武HD社長は2万3000円だから3日目で脱落だ。

 よくよく読売の回答をチェックしてみると、安値が2万円を切ると回答した人が2人いた。御手洗冨士夫・キヤノン会長兼CEOと八郷隆弘・ホンダ社長の2人が1万9000円だった。安値2万円が7人もいて、株価の先行きについて、かなり慎重な見方をしていることがわかる。

(文=有森隆/ジャーナリスト)

有森隆/ジャーナリスト

有森隆/ジャーナリスト

早稲田大学文学部卒。30年間全国紙で経済記者を務めた。経済・産業界での豊富な人脈を生かし、経済事件などをテーマに精力的な取材・執筆活動を続けている。著書は「企業舎弟闇の抗争」(講談社+α文庫)、「ネットバブル」「日本企業モラルハザード史」(以上、文春新書)、「住友銀行暗黒史」「日産独裁経営と権力抗争の末路」(以上、さくら舎)、「プロ経営者の時代」(千倉書房)など多数。

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