ヤマダ電機の動きが急だ。2月4日に発表された2015年4~12月期の連結決算は、純利益が前年同期比87%増の262億円と様変わりした好調さだった。この期間の利益改善は、売り上げの上昇によるものではない。売上高は3%減の1兆2052億円だったのに対し、営業利益は2.4倍の430億円と、利益効率が大幅に改善されたのだ。
ヤマダは昨春来、既存約300店の改装を一気に実施し、白物家電の売り場面積を大幅に拡大した。結果、商品構成率でエアコンが上半期で前年同期から0.7ポイント増の9.8%に、冷蔵庫は同0.6ポイント増の9.3%、洗濯機は同0.7ポイント増の6.4%といずれも増加した。
しかし、既存商品や売り場構成といったマーチャンダイジングなどの小手先の変化に目を奪われると、ヤマダが目指している大きな戦略転換を見逃してしまうことになる。業績回復となった最大の要因は、昨春に断行された不採算店40店強の閉店である。本連載では14年からヤマダの出店拡大戦略が限界にきたことを指摘していた。
「ヤマダ電機は全国に1016店舗を展開する。(略)人口3万人規模の市に1万世帯が生活しているとしたら、1世帯あたり年間19万円程度(ヤマダで)消費している計算が成り立つ」(14年12月12日付記事)
同記事が山田昇・ヤマダ社長兼CEOの目に留まったとも伝えられるが、15年春に電光石火の大量閉店となった。私は「そんなことができるのは、創業社長である山田氏ゆえだろう」と評価したが、山田社長自身も「(出店による規模拡大は)もう限界ですよ。店を出せば出すほど効率が悪くなる」(12月11日放送『ワールドビジネスサテライト』<テレビ東京>)などと、認識の変化があったことを公言している。
店を変え、品を変え
15年11月に発表された中期経営計画では、今後出店ペースは年間8~10店に抑える一方で、白物家電売り場の拡張などをはじめとする店舗改装は、今後も年間200店ペースで実施していく方針だ。しかし、実はヤマダの出店戦略はそれ以上に大きく舵が切られている。
まず、15年10月末に東京・八重洲にオープンした「コンセプトLABI東京」だ。米アップルやソニー、パナソニックの商品だけを集めたコーナーが設けられ、メーカーのショールームと見まがうようなフロアでは、最新のAV機器など高額商品がずらりと並ぶ。また、インバウンド外人顧客を狙ったフロアなども構成され、富裕層や爆買い観光客をターゲットとしていることが明白で、従来のLABI店とはまったく異なる店舗構成である。