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アマゾンと出版社、容赦ない取次「外し」加速…問われる取次の存在意義、存亡の危機か

文=佐伯雄大
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アマゾンに傾く出版各社

 では、これほどアマゾンが直取引をアピールする理由はなんなのか。それは、相次ぐ取次の破たんである。

 一昨年に、大手出版社と大日本印刷、楽天の出資により、債務超過を解消した大阪屋。昨年に民事再生を申請して今年4月に大阪屋と合併して、大阪屋栗田となる栗田出版販売。そして、今年2月に自主廃業を発表した太洋社。2014年から毎年中堅の総合取次が破綻しているのである。

 昨年にアマゾンの勧誘セミナーに参加した出版社社員は話す。

「セミナーでアマゾンのスタッフは、契約出版社数が右肩上がりのグラフを見せながら、栗田が民事再生を申請した6月26日以降に直取引の契約を結ぶ出版社が一気に増えたと言っていました。現在も契約出版社数は増えていると思います。卸率66%という条件は、出版社が扱う全商品を直取引の対象とした場合だけです。これまで、様子見や戦略で一部商品しか直取引の対象にしていなかった出版社も巻き込もうとしているようです」

 また、別の出版社社員もこう明かす。

「アマゾンのシェアは高まる一方です。太洋社が自主廃業を発表して、太洋社と取引をしていた書店が別の取次との取引に切り替えていますが、出版社側にしてみれば、その書店に納めていた書籍の初回搬入数は新たな取次が部決する数に反映されない。こうして縮小する書店分の売り上げを補てんするために、出版社が思い切ってアマゾンと直取引しようと考えるのもうなづけます。キャッシュフローもよくなるわけですし」

 どうやら相次ぐ取次の破綻が、出版社とアマゾンとの直取引拡大の追い風になっているようだ。裏を返せば、取次という緩衝材の弱体化により、アマゾンの出版社に対する支配力が増しているともいえる。

 ある出版社社員は言う。

「取次の対応が遅いので、アマゾンと直取引をしようかと思い始めています。ですが、周りの人からアマゾンの辛辣な話をたくさん聞きます。好条件で契約してもすぐに卸率を下げられるのではないか、という心配もあります。ただ、これだけ本が売れない時代に、売れる本だけは、その売り上げを最大化したいという切羽詰まった考えもあります。書店と取次の力が落ちていけばいくほど、出版社はアマゾンに寄りかかっていかざるを得ないという状況になっているのです。それが出版業界を破壊するとしても、業界が新しく生まれ変わるきっかけだと信じて、その道を行くしか選択肢はありません」
(文=佐伯雄大)

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