歴史を振り返ってみよう。JALの破綻に至るまでの過程では、自民党航空族議員に大きな責任がある。不採算路線を無理やり拡大させたのは、それぞれの地域で利権を持っていた航空族議員だった。自分の選挙区にある、赤字が確実な地方の空港にゴリ押しで就航させた結果、JALの負債が膨らんだ。
民主党政権が民事再生法ではなく会社更生法を選択したのはJALと族議員との癒着を断ち切るという狙いがあったからだ。会社更生法だったからこそ不採算路線を、バッサリと整理することができた。
だが、12年初夏から風向きが変わった。次期衆院選で自民党が勝つとの予測が強まった。政治の風の変化に国土交通省はすばやく対応した。「次の選挙で我々が勝てば、どうなるか分かっているのか」と自民党のPTに参加する議員が国交省の官僚を恫喝したのは、この頃だった。
国交省は民主党がバックアップしてきたJALと距離を置き、自民党にすり寄っていった。同省は12年7月、不採算路線を整理して黒字化に成功したJALに対し、「(業績が回復した以上)国内路線のインフラ維持に責任がある」として、撤退した路線の復活を求めた。
2013年3月から発着枠が増える羽田空港国内線の航空各社への新たな配分において、国交省は自民党に白旗を掲げたと受け止められた。同省は12年11月30日、1日当たりの配分枠数を全日空8に対してJAL3とした。現在の発着枠はJALが180.5枠なのに全日空は163.5枠。シェア通り配分されれば、全日空の配分がJALの3倍弱になることは考えられなかった。JAL再建について過剰支援と批判する自民党に配慮したものと言われた。
羽田空港の発着枠は、1枠当り年間20億~30億円の売り上げが期待されるという。今回の配分により、全日空はJALより年間100億~150億円の売り上げが増える計算だ。
今後の焦点は国際線発着枠の配分である。羽田空港の発着枠が14年春に年間約3万回増加することに伴い、1日あたりの発着枠を42枠(42便分=発着84回)増やすことが決まっている。
国際線の増枠効果は国内線の比ではない。航空会社の今後の経営を決定づけるといっても過言ではない。増枠を巡って激しい争奪戦を繰り広げられることになるが、国内線の配分ではっきりしたことは、増枠は経済原則ではなく政治で決まるということだ。
「国際線の割り当てで不利な扱いを受けないようにしたいなら、自民党の傘の下に戻って来い」というJALに対するメッセージである。
政権与党に戻った自民党の航空族議員は久方ぶりに権力の醍醐味を堪能している。
(文=編集部)