マスコミ経済学が支離滅裂になる背景
今、世界中のあちこちで目を見張るような大きな経済事象が起こっている。中国経済の停滞、イランの経済制裁解除、ドイツの有力企業の業績不振、アメリカの金利引き上げなどだ。それぞれ、異なる背景と事情があって起こっているそれらの経済事象は、さまざまなベクトルを向いて影響を及ぼしている。日本経済にとって、マイナスの面もあるがプラスの面もある。一部の企業にはプラスだが、他の企業にはマイナスのものもある。当たり前だが、現実の世界経済は多様で複雑だ。
マスコミでは、それらのすべての経済事象が、今報じようとするニュースの背景として同じベクトルに向かっているかのように説明しがちだ。たとえば、そのすべてが日本の株式相場の下落に影響を及ぼしていると説明する。そうしたほうが、わかったような気になるからだろう。
しかし、現実はそう単純ではない。ある経済事象は日本経済にプラスだけれども、それにもかかわらず別のマイナス要因のほうが強くて、日本経済はマイナスに動いているということも多い。そいうことに留意しつつ、マスコミには自社の過去の報道や解説との一致不一致をある程度確認しながら説明することを期待したい。
ちなみに、今回の記事を、2014年12月10日付本連載記事『アベノミクスは経済を動かしていない 景気への影響小、「燃費の悪い」経済政策』と比べて確認してみたい。ほとんどその内容と変わっていないことに、ほっとする。
1年3カ月前に安倍首相が「株高になってアベノミクスが成功している」と言っていた時に、筆者は次のように述べている。
・円安は、たいしてプラスではない
・株高は、それだけで成果ではない
・アベノミクスは、ブレーキとアクセルを同時に踏んだので効率が悪かった
これは、株が下がり円高になった現在書いた本稿の説明と、一貫性がとれていると思うがどうだろうか。
実際の日本経済の状態
では、日本経済の実態はどうなのだろう。
日本経済にとって、原油安はプラス、米国経済の復調傾向はプラス、そして円高はマイナスではない。株価が下がっているのも、大きな問題ではない。とはいえ、中国経済の不振はマイナスだ。
こうしてみると、世界で起こっている事象は、日本にとってはマイナスの話もあるが、実はそれほど悪い話ばかりではない。確かに、欧州、中国、ロシア、ブラジルなどよりは、不安は少ないといえる。