それに対して(3)は、目尻のしわをなくそうとボトックス注射をして細胞の再生を促すような本格的な対策で、ハリウッドセレブたちがご愛用ではあるが、その効果はさまざまだ。そして(4)の代表商品はウィッグ(かつら)などである。
ほとんどの消費者は30~40代で歳を感じるとまず(1)と(2)の商品で対策をするようになる。ところが本当に歳をとってくるとそれでも老化は止まらず、必然的に(3)か(4)の商品を使わざるを得なくなる。
ところが(3)はとても価格が高いため、消費者は(1)と(2)でも効果が出なくなれば、(4)の商品を購入するようになる。冒頭に紹介した私が愛用するシャンプーは、この(4)の新製品。その正体はというと、商品のウリが「髪のボリューム感をふやす」というものだ。
このシャンプーの使用感は普通のものと同じで潤いも感じるし、洗っているときの髪はさらさらな感じがするのだが、髪が乾いてくるとのりづけされたワイシャツのようにぱりっとしてくる。根本が補強されて髪が垂直に立って、その髪も周囲がコーティングされたような感じがする。そうするとおもしろいもので、髪の毛の本数が少なくても髪が全部頭皮と垂直方向に伸びるので、ボリュームが多く見えるのだ。
髪がさらさらになることをウリにする通常のシャンプーを使うと、髪がやわらかくなってしなやかに頭皮に沿って垂れてくる。そうなると若い頃と違って髪のボリュームが減ったのが一目瞭然になる。出張先のホテルで備え付けのシャンプーで頭を洗うと、本当にこんな感じになる。
その違いが明確だから、私はこの緑のシャンプーを愛用していたのだが、私以外にも多くの消費者が同じことに気がついたのだろう。メーカーの生産計画以上に需要が出て売り切れになったという現象が起きたのだ。
「劣化を隠す」市場への需要増大
さて、このような現象が起きたのは、私がジジイの年齢にさしかかったからというよりは、私よりも10歳年上の団塊の世代にとってこの問題がより切実だからということなのだろう。高齢者のボリュームゾーンはいよいよ老人になってきた。必然的に老化防止マーケットでは、これまで主力だった(2)の劣化を補うサプリメント市場よりも、(3)の劣化していないように見せかけをつくる市場のほうが大きくなる。
たとえばウィッグは、従来は高齢の女性が恥ずかしそうに頭に載せるものだったが、最近では比較的若い50代の頃からファッションとして常用する人が増えてきた。若いうちからウィッグをファッションアイテムにしておけば、本当に薄くなってから恥ずかしい思いをすることもないだろう。